文:赤羽ひな(ラリーズ編集部・欧州特派員)写真:Upsala-Circusロシアにピンポン球を使ってサーカスをするパフォーマンス集団がいる。そのサーカスは、大小さまざまなピンポン球の動きに合わせ、楽器の演奏やジャグリング、アクロバティックな…

文:赤羽ひな(ラリーズ編集部・欧州特派員)
写真:Upsala-Circus

ロシアにピンポン球を使ってサーカスをするパフォーマンス集団がいる。

そのサーカスは、大小さまざまなピンポン球の動きに合わせ、楽器の演奏やジャグリング、アクロバティックなダンスなどを行う。

彼らの名は「アップサラサーカス」。

路上で暮らす子どもたちの社会復帰を目的として2000年に結成され、団員のほとんどが7歳から18歳の子どもたちだ。

ロシアだけに留まらず、ヨーロッパ各地でパフォーマンスを行う彼らの公演「The Ping-Pong Ball Effect(ピンポン球の効果)」の魅力に迫る。

古都で観るサーカス




スコットランドの古都、エジンバラで8月2日から28日にかけて、そのサーカスは行われていた。

エジンバラでは毎年8月に大きなお祭りが開催される。観光客で賑わい、50万人ほどの都市人口が通常の倍以上にも増えるという。都市全体がお祭り気分で浮き足立つなか、街のいたるところに彼らのポスターを目にする。これまでもイギリス各地やドイツなどで活躍した経験のある彼らを一目見ようと、会場には小さい子供から老夫婦まで多様な人種の老若男女が集っていた。

チケットは11ポンド(約1500円)と比較的お手頃な価格で、汗が滴り落ちるのが見えるほど近距離で鑑賞することができた。

ピンポン球から生まれる独自の世界観




会場に入ってほどなくして照明が落ちると、音楽が始まる。

チェロやエレクトーンなどの楽器やボイスパーカッションの音とともに、ピンポン球の音を混じえて音楽が創られてゆく。卓球場に入った瞬間に聞こえるピンポン球が跳ねる”軽やかなあの音”が、そこではモダンな音楽へと変わっていた。

2人の演奏者と7人のダンサーによって、臨場感のあるリズムを奏でながら、ピンポン球を使ったジャグリングや、白いピンポン球に見立てた丸くて大きなマットの上でアクロバティックなダンスが繰り広げられる。「白くて丸いもの」をピンポン球として広く捉え、白いフラフープや空気砲といった多様な道具を使い、サーカスは進む。



サーカスのテーマは「宇宙」。

女の子が宙に浮いてピンポン球を追いかける場面もあり、まるでピンポン球が星のように感じられ、幻想的な雰囲気を演出している。クライマックスには音楽のボリュームも徐々に上がり、観客席にまで飛び跳ねてくるほど大量のピンポン球が流れ出てきて、誰もが自然と手拍子を打ってしまうような高揚感に包まれる。

過去にドイツで行われた公演のショートムービー(本文冒頭にYouTube動画あり)を見るだけでも、「ピンポンなのに卓球とは違う」独特な世界観を堪能できるだろう。

ピンポン球サーカスの魅力

「家族連れで来たけど、全員が楽しめた。」

鑑賞した人々は口を揃えて言う。

55分間の公演のあいだ、年代問わず誰もが惹きつけられる魅力がピンポン球サーカスにはあった。年齢の違いだけでなく、身体の動きと音楽で世界観を表現するサーカスだからこそ、英語がわからない人でも存分に楽しめるだろう。

日本での公演予定はまだないが、世界のどこかで新しい観光スポットの一つとして嗜んでみてはいかがだろうか。

|Upsala-Circus関連リンク
Upsala-Circus:www.upsalacircus.ru 

The Ping-Pong Ball Effect:https://tickets.edfringe.com/whats-on/ping-pong-ball-effect