J2は、今シーズンも激戦が続いている。残るは6節となっているが、J1昇格プレーオフにどのチームが進むのか、まったく見えてこない。その中で、サッカージャーナリスト後藤健生が注目するチームがある。前身の時代から名門として知られた、ジェフユナイ…

 J2は、今シーズンも激戦が続いている。残るは6節となっているが、J1昇格プレーオフにどのチームが進むのか、まったく見えてこない。その中で、サッカージャーナリスト後藤健生が注目するチームがある。前身の時代から名門として知られた、ジェフユナイテッド千葉である。

■開始とともに「激しい」撃ち合い

 9月21日にフクダ電子アリーナで行われたJ2リーグ第32節、ジェフユナイテッド千葉対レノファ山口戦。前節まで山口が6位でホームの千葉が7位。つまり、6位以内のJ1昇格プレーオフ圏を争う直接対決だった。

 そして、試合は集まった9984人の両チーム・サポーターの期待に違わぬ大熱戦となった。

 試合は開始とともに激しい撃ち合いとなり、15分までに両チーム合わせて3枚のイエローカードが提示された。遠目から積極的にミドルシュートを撃つ山口。そして、千葉もロングボールで対抗する。

 そんな中で、次第にゲームを支配し始めたのが千葉だった。20分、右からカットインした杉山直宏がシュート。22分にはDFの佐々木翔悟がミドルシュート。23分には中盤から品田愛斗が入れたクロスに小森飛絢が飛び込んでいく。

 この後、山口が積極的にクロスを入れてチャンスを狙う時間帯もあり、ともに主導権争いを続けた前半が終了しようとしていた中で、43分に千葉の先制ゴールが生まれた。

 バイタルエリアにいた横山暁之にくさびのパスが入り、横山は右にはたいて杉山がクロス。その流れから中盤で再び千葉がつないで、最後はエドゥアルドのミドルシュートを山口のGK田口潤人が弾いたところを、エースストライカーの小森が見逃さずに決めきった。

■「楽勝ムード」のスタジアムに緊迫感

 そして、後半開始6分に、千葉は追加点を決めて優位に立った。

 左サイドでつないだ後、左SBの小川大貴が差し込んだパスが、いわゆるポケットを取った田中和樹につながり、田中のクロスをゴール前に飛び込んだ横山が決めた。流れるようなリズムでパスがつながったビューティフルゴールだった。

 反撃を試みる山口だったが、千葉の堅守に跳ね返され、さらに65分に交代で入ったばかりの小林成豪がドリブルシュートを狙ったが、左のポストに嫌われるなど運も味方せず、試合は2対0のまま最終盤に差し掛かった。

 ところが、86分に山口に追撃のゴールが生まれた。

 DFからの縦パスで右サイドの奥山洋平が深い位置まで持ち込んでクロス。このクロスは千葉に防がれたが、すぐに再び右から奥山が同じような形のクロスを入れ、ゴール前に混戦ができ、相田勇樹が放ったシュートを千葉のGK鈴木椋太が弾いたところを酒井宣福が決めた。

 これで、「楽勝ムード」だったスタジアムが一気に緊迫感に包まれた。

 追い上げられた千葉は、守りに入るのではなく、積極的にカウンター攻撃を仕掛ける。

 そして、93分に左サイドをドゥドゥがスピードドリブルで持ち込んで、早いタイミングでゴール前のスペースにボールを流し込むと、走り込んだ小森がGKの鼻先で触って3点目をゲット。再び2点差とした後、DFの山越康平を送り込んで3バックに切り替えた千葉だったが、95分にも右サイドでつないで起点を作り、最後は投入されたばかりの岡庭愁人が仕掛けてファウルを誘発。獲得したPKを小森が決めて4対1とし、小森自身もハットトリックを完成させた。

■「常勝軍団」ではないからこそ

 試合終盤までは余裕の勝利といったムードだったスタジアムも、最後の数分間の連続ゴールで大いに盛り上がって終了。千葉は、山口と入れ替わってプレーオフ圏内の6位に順位を上げた。

 いわゆる“常勝軍団”の優勝を争うようなチームであれば、2対0で終盤までリードしていた試合なら、無風のままクリーンシートを達成して逃げ切らなければいけない。

 だが、千葉のようなJ1昇格に挑戦しているチーム、攻撃的サッカーで力をつけつつある成長途上のチームにとっては、こうしたエキサイティングな試合の終わらせ方も必ずしも悪いことではなかったのかもしれない。

 とくに、千葉は前節にはブラウブリッツ秋田に1対0で敗れ、ミッドウィークに行われた天皇杯全日本選手権準々決勝でも京都サンガF.C.に3対0で完敗を喫していた(J1リーグで下位に低迷していた京都は、このところ上昇気味で、天皇杯にもかなり主力級のメンバーで臨んで非常に良い内容の試合をした)。千葉にとっては、そんな嫌なムードの中で、天皇杯から中2日で臨んだ山口戦だったのだ。

 そうしたことを考えれば、最後に2点を取っての「派手な」勝ち方は、チームに勢いをもたらすという点では、あのまま2対0で終わらせるより良かったのかもしれない。

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