「広島5-4巨人」(21日、マツダスタジアム) こんな試合を待っていた!広島が逆転勝ちで連敗を4で止めた。試合を決めたのは末包昇大外野手(28)だ。八回2死一、三塁で左前に決勝適時打。9月戦線で苦しみ続けてきた主砲がようやく目を覚ました。…

 「広島5-4巨人」(21日、マツダスタジアム)

 こんな試合を待っていた!広島が逆転勝ちで連敗を4で止めた。試合を決めたのは末包昇大外野手(28)だ。八回2死一、三塁で左前に決勝適時打。9月戦線で苦しみ続けてきた主砲がようやく目を覚ました。チームは再び3位に浮上。劇的な1勝を弾みにし、22日から敵地での中日2連戦に臨む。

 バットは折れたが、気持ちで運んだ。熱狂渦巻く本拠地で末包が大歓声を浴びる。これまでたまった鬱憤(うっぷん)を晴らすように豪快なガッツポーズを繰り出し、感情を爆発させた。雨が降りしきる中のお立ち台。チームでもぎ取った1勝をかみしめながら、言葉を並べた。

 「点差があった中でも諦めずに全員がやっていた。最近、苦しい試合が続く中で、打てていなかった自分が変わらないとと思ったところだった。気持ち一つで打ててよかったです」

 ドラマは八回に待っていた。秋山、小園の連続適時打に失策が絡み、同点に。坂倉が申告敬遠で歩き、2死一、三塁で打席を迎えた。巨人はここで船迫にスイッチ。「僕のところで投手が代わるのはある程度準備していた」と頭は冷静だった。2ボールから内角のスライダーを左前へ。「いい詰まり方ができた」と納得の一打で試合をひっくり返した。

 9月は大不振に陥っていた。試合前まで打率・167、0本塁打、4打点。「自分の中でどうすればいいんだろうというのはありました」。20日の試合では、右翼の守備で落球。この日も五回にけん制死で好機をつぶすなど、走攻守で精彩を欠いていた。

 主砲の復調なくしてチームのトンネル脱出がないことは、首脳陣が一番理解していた。19日・ヤクルト戦(神宮)の試合前練習では新井監督が約35分間の直接指導。藤井ヘッドコーチからも「相手は思っているより自分(末包)のことを怖いと思っている。どんどん振っていけ」とメンタル面でも支えられながら、試合に臨んでいた。

 末包の決勝打に新井監督の表情も緩んだ。「しっかりバットで取り返してくれた。悔しい思いはたくさんしていると思うけど、そういう経験をしながら成長していくもの。ナイスバッティング」と褒めたたえた。

 チームは連敗を4で止め、再び3位に浮上。惨敗が続き、本拠地でも試合終了前に空席が目立つこともあった。しかし、この日は雨の中、最後まで声援を送った鯉党へ最高の勝利を届けた。「応援したいなって思えるようなチームになりたい。頑張れよ、頼むぞという声も聞こえています。まだまだ頑張ります」とお立ち台で言い切った末包。ラストスパートの中心には、この男がドシッと座っている。