「大相撲秋場所・14日目」(21日、両国国技館) 13日目の20日に現役を引退した元大関貴景勝(28)=本名佐藤貴信、常盤山=が21日、両国国技館で記者会見した。2014年秋場所の初土俵から、10年間歩んできた相撲人生を振り返って目を赤く…

 「大相撲秋場所・14日目」(21日、両国国技館)

 13日目の20日に現役を引退した元大関貴景勝(28)=本名佐藤貴信、常盤山=が21日、両国国技館で記者会見した。2014年秋場所の初土俵から、10年間歩んできた相撲人生を振り返って目を赤くし、声を震わせながら「燃え尽きた」と語った。175センチ、165キロの体で奮闘し、幕内優勝は4回を誇った。今後は湊川親方として、常盤山部屋で後進の指導にあたる。

 歩んできた貴景勝の相撲道に一片の悔いもない。慢性的な首痛で、幼い頃から夢見た横綱昇進を果たせぬまま、28歳1カ月の若さで引退を決意。道半ばで土俵に別れを告げることになったが、声を震わせながら思いのたけを語った。

 「燃え尽きました。小学校3年生から横綱になることだけを夢見て頑張ってきたんですけど、横綱を目指す体力と気力がなくなったので引退しました」

 けがと戦い続けた相撲人生。18年九州場所で初優勝を果たすなど幕内優勝は4回を数えたが、身長差を覆す押し相撲は負担がかかった。体はボロボロで、大関昇進後は9度のかど番に追い込まれたが「つらくなかった」と語る。大関昇進時の口上に『武士道精神』を挙げた貴景勝らしく「勝っておごらず、負けて腐らず」と弱音は一切はかなかった。

 身を引く覚悟を決めたのは常に口にしている「準備」がままならなくなったから。「戦うまでのやるべきことがしたくても、できなかったこともあった」。現役晩年は首の痛みで本来の実力が発揮できず。大関復帰を目指した秋場所2日目、自身最後の一番は、かつての付け人だった王鵬に引導を渡される形となった。

 力士としては小さい175センチの身長も乗り越えて、大関まで上り詰めた。新弟子時代は幕内力士の大きさに圧倒されたが「一度入ったからには覚悟を決めて」と歯を食いしばってきた。気高い精神力は今後、育成する後進に受け継がれる。「武士道精神を持った、僕が昭和の先輩から教えていただいた、今の時代には少し不向きかもしれませんが、根性と気合を持ったそんな力士を育ててみたい」と第二の人生を歩み始めた。

 ◆貴景勝貴信(たかけいしょう・たかのぶ)本名佐藤貴信。1996年8月5日、兵庫県芦屋市出身。小3で相撲を始め、報徳学園中3年で中学横綱。埼玉栄高では全国7冠に輝いた。貴乃花部屋に入門し、2014年秋場所で初土俵。16年夏場所で新十両、17年初場所で新入幕。18年10月に千賀ノ浦部屋(現常盤山部屋)に転籍。同九州場所で幕内初優勝を果たした。19年春場所後に大関昇進。幕内通算46場所で大関在位は30場所。優勝4回、殊勲賞3回、敢闘賞2回、技能賞2回、金星3個。通算成績は441勝254敗116休。しこ名は前師匠の貴乃花親方が好きな武将・上杉景勝が由来。家族は有希奈夫人と1男。175センチ、165キロ。O型。