9月14日のサンフレッチェ広島戦では、長期離脱から復帰した知念慶と17歳の新鋭・徳田誉にゴールが生まれた鹿島アントラーズ。8月は3-0で勝利したサガン鳥栖戦以外、得点が伸びずに苦しんでいただけに、鈴木優磨以外の選手がゴールしたことは朗報だ…

 9月14日のサンフレッチェ広島戦では、長期離脱から復帰した知念慶と17歳の新鋭・徳田誉にゴールが生まれた鹿島アントラーズ。8月は3-0で勝利したサガン鳥栖戦以外、得点が伸びずに苦しんでいただけに、鈴木優磨以外の選手がゴールしたことは朗報だ。

「(先制ゴールの場面は)練習した形だった。チームとしてセットプレーに強みを持っているし、押し込まれた展開でも失点さえしなければ、自分たちはあのようなチャンスを作れるという自信もあったので、それが表れたシーンだったと思います」と背番号13は今季スタート時までFWだった男らしい得点感覚の鋭さを前面に押し出した。浦和レッズ東京ヴェルディ戦に欠場を強いられた分、チームに目に見える結果を残したかったに違いない。それが叶ったことで、彼は自信を取り戻したのではないか。

 実際、今季J1前半戦デュエル王のボランチ不在はチームに大きなダメージを与えていた。中盤の守備力低下が攻撃のインテンシティや推進力が上がらない一因になっていたのは確かだ。知念が戻ってきたことで、即時奪回の回数は明らかに増えたし、広島の攻撃の芽を摘むシーンも何度か見られた。この守備強度があってこそ、前線のアタッカー陣も思い切って前へ出られる。知念にはここからタフに戦い続けてもらわなければ困るとランコ・ポポヴィッチ監督も考えているに違いない。

■鈴木優磨「僕は戦力だと思っている」

 そしてもう1人の徳田はご存じの通り、まだ高校3年生。鹿島の未来を背負う若きFWが後半37分という追い込まれた時間帯に鈴木優磨のパスを受け、佐々木翔を背負いながら反転シュートを決め切ったのだから、指揮官もチームメートも喜ばないはずがない。

 17歳6カ月27日でのゴールは、かつて内田篤人がマークした17歳11か月22日のクラブ最年少ゴール記録を更新した形。まさに”内田超え”の偉業だったのである。

「負けてる状況だったのでゴールしか見てなかったですし、つねにシュートを狙ってたので、自分の中で打てる形が来たなと思って迷わず打ちました。自分の体もうまく入れることができましたし、ファーストタッチもシュートを打てるところに置けたので、迷わず打てました」と本人も堂々たる口ぶりでメディアの取材に応じていたが、この時点で点取屋の風格を漂わせるところがあった。

「僕は戦力だと思っている。よく決めてくれました。左足に付けてあげれば、彼の能力なら反転して打てるなと感じていた。僕も同じFWとして気持ちが分かるので。ターレスもすごくアクセントが効いていて、今後、すごい力になってくれると今日やって感じましたね」と鈴木優磨も徳田、ターレスが後半途中から入った効果を絶賛。チャヴリッチが長期離脱している今、新たな攻撃のピースが迫力をもたらしてくれるという手ごたえをつかんだ様子だった。

■攻撃のギアを挙げる存在に

 今季の鹿島は攻撃のギアを上げる存在が乏しいと言われてきたが、ここへきて2人が調子を上げてきたのは朗報だ。後半途中から入った藤井智也も徳田の同点弾につながるドリブル突破で違いを見せており、流れを変える選手として存在感を高めつつある。今回ベンチ外となった田川亨介らを含め、もっともっと攻撃陣が切磋琢磨し、得点力を高めないといけないのは事実。それが短期間に結果となって表れれば、奇跡の逆転タイトルも夢ではないはずだ。

 このからの鹿島は柏レイソル湘南ベルマーレアルビレックス新潟アビスパ福岡と確実に勝たなければならない相手との試合が続く。さらに9月25日には天皇杯準々決勝でヴィッセル神戸とも激突する。タイトルを1つでも取りたいなら、それも落としてはいけない。ここからがポポヴィッチ監督体制1年目の鹿島の真価が問われるところ。チーム全体としてラストスパートをかけることが肝要である。

(取材・文/元川悦子)

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