全米オープンも1回戦敗退となった土居美咲 土居美咲(WTAランキング94位、8月28日付け、以下同)がUS(全米)オープン1回戦で第23シードのバルボラ・ストリコバ(25位、チェコ)に1-6、3-6で敗れた時点で、彼女の2017年シーズ…



全米オープンも1回戦敗退となった土居美咲

 土居美咲(WTAランキング94位、8月28日付け、以下同)がUS(全米)オープン1回戦で第23シードのバルボラ・ストリコバ(25位、チェコ)に1-6、3-6で敗れた時点で、彼女の2017年シーズンのグランドスラムでの挑戦は終了した。

「(ストリコバは)コートカバーリングの力が高いですし、追い込んでもかなり深いところにボールが帰ってきた。強いボールはないけど、うまいと感じた」

 こう振り返った土居は今季、オーストラリアン(全豪)オープン、ローランギャロス(全仏)、ウインブルドン、そしてUSオープンとグランドスラム4大会すべてで初戦敗退という不本意な結果となった。

「グランドスラムを含めてなかなか勝てていないというのがあるので、少なからず迷いはありますし、なかなか自分の思い通りにできていないことが多いですね。特に初戦が緊張しやすいというのもあって、そこを突破できれば、多分リズムができるのですが……」

 WTAツアーではニュルンベルク大会でベスト4、台北大会でベスト8に進出したものの、WTAツアー大会も含めた本戦での初戦敗退はUSオープンまでで11回を数える。

 5月のニュルンベルク大会準決勝で腹筋を痛めた影響もあっただろう。ローランギャロス1回戦では、痛みによって力を出し切れず敗退して、試合後の会見では大粒の涙を流した。6月のグラスシーズンでは大会出場を見合わせ、回復に努めた時期もあった。

「多少は影響していることはあると思いますけど、そこを言い訳にはできない」という土居だが、世界ランキングは2017年シーズン開幕時40位だったが、みるみる下降。現在はトップ100をギリギリ保っている状態だ。

 昨シーズンは自分のことを対戦相手がよく知らなかった分、ポイントが決まりやすい部分があったが、今季は対策を講じられていることも増えたと土居は感じている。だが、勝てていないのはあくまでも自分に原因があると主張する。

 そんな彼女をフェドカップ日本代表監督の土橋登志久氏は次のように分析する。

「(土居は)もともとフォアのショットの威力が軸になるんですけど、その打つコースだったり、戦術パターンがそんなに多い方ではないので、そこを相手に読まれている」

 2017年シーズン、土居はWTAツアーの下位グレードにあたるITF大会には1回も出場していない。女子ではグランドスラムの本戦ストレートインの目安は108位なので、今のポジションを死守し、ポイント獲得のためにはITF大会にエントリーするという策が頭をよぎってもっても不思議ではないのだが、「考えていないというとバカみたいですけど、ランキングのことは考えないようにしている」と土居にはそんな守りの思考はない。

 もともと土居は100位前後の時からレベルの高いツアーへ果敢に挑戦して、たとえポイントが取れなくても、もまれながら実力をつけて這い上がってきたタイプだ。ランキングポイントを上げることより、自分の実力をもっと上げることを大事にしたいというのが彼女なりの復活への流儀なのだろう。

 また、土居がポイントのことを気にして、ITF大会を自分のスケジュールに入れようかと口にすれば、決まって「おまえ、何を変なことを考えているんだ。大きな視野で考えなさい」と、クリスチャン・ザハルカコーチからの激が飛ぶ。

 例えば、10月いっぱいでWTAツアーの日程は終了するため、11月以降のITF大会のエントリーを土居が考慮しただけでも、「何を考えているんだ。勝てるって」とザハルカコーチの説教が始まってしまう。決して土居がネガティブに考えているのではなくて、単にエントリーの締め切りやスケジュールの検討をしていただけにもかかわらずだ。

 それよりもザハルカコーチは、9~10月の残りのWTAツアーで必ず土居が勝つことを信じ切っており、決して後ろ向きになる発想をしない。

 ザハルカコーチは、2015年春のクレーシーズンから土居に帯同しているが、「調子が悪かったり、勝てていないからといって、やることを変えるのはおかしい」と土居に信念を持って言わせるほどの影響を与えている。土居は自分の武器であるフォアハンドストロークを徹底して磨いていくことに変わりはないとしたうえで、試合中での大事な場面でどういったプレーをするべきかをコーチと話し合っていきたいと前を向く。

「試練の年になっていますけど、それがまた選手を強くする」と土橋氏は、今後の土居に期待を寄せる。たとえ歩みが少しずつでも、たとえ泥臭くても、土居は勝利を拾うことができれば自信が芽生え、再浮上のきっかけをつかむことができるはずだ。

「本当にやり続けるしかない。ひとつひとつ、一日一日を大事にして、練習と試合に取り組むことが、(自分に)できることだと思うので、腐らずに頑張ります」

 2015年にはシーズン最後のWTAルクセンブルク大会でツアー初優勝を飾ったように、今季残りのシーズンで、土居が巻き返すチャンスはまだまだある。26歳になって、日本女子テニスの中心的な存在である土居の復活を懸けた戦いは続く。