蹴球放浪家・後藤健生は、世界を巡る。もちろん、サッカースタジアムを訪れるためだ。国内外を渡り歩いてきた蹴球放浪家が選ぶ、世界で最も便利なサッカースタジアムはどこか? ■なでしこも戦ったスタジアム 同じように、プラットフォームから直接スタ…
蹴球放浪家・後藤健生は、世界を巡る。もちろん、サッカースタジアムを訪れるためだ。国内外を渡り歩いてきた蹴球放浪家が選ぶ、世界で最も便利なサッカースタジアムはどこか?
■なでしこも戦ったスタジアム
同じように、プラットフォームから直接スタジアムのコンコースに行けるのが、ニュージーランドの首都ウェリントンにある「リージョナル・スタジアム」です。衛星放送会社の「スカイ」が命名権を獲得して、現在は「スカイ・スタジアム」と呼ばれています。
昨年、オーストラリアとニュージーランドでFIFA女子ワールドカップが開催されたときに使用され、グループリーグで日本代表(なでしこジャパン)がスペインを4対0で破ったのも、このスタジアムでした。
天然芝のピッチは楕円形で、この国の国技であるラグビーの他、サッカーやクリケットにも使用され、サッカーではオーストラリアのプロ・リーグであるAリーグに所属するウェリントン・フェニックスのホームスタジアムにもなっています。
そして、ウェリントン中央駅のプラットフォームから階段を昇れば、プロムナードに出ることができ、100メートルほどを歩くとスタジアムの入場ゲートに到着するのです。
オールド・トラフォードやザンクトヤコブ・パルクのような臨時駅ではなく、一国の首都の中央駅から直通というのだから、ビックリします。もっとも、ウェリントンという町は首都とはいえ、人口40万人ほどのとてもコンパクトな都市なのですが……。
■サッカーVSラグビー
アイルランド共和国の首都ダブリン近郊にあるアビバ・スタジアムは同国代表のホームとなる約5万人収容のスタジアムですが、メインスタンド下に「ランズダウン・ロード」駅が存在します。
このスタジアムのユニークなのは、アイルランド・サッカー協会(FAI)と同ラグビー協会(IRFU)の共同所有である点です。たいていの国でサッカーとラグビーはライバル関係にあるのでスタジアムも別々に持っているのが普通です。日本でも、日本ラグビー協会は秩父宮ラグビー場をサッカーに使わせるのを嫌がります。
アイルランドはかつてイングランドの植民地だったので(完全独立は1937年)反英感情が強く、アイルランド固有のスポーツであるゲーリック・フットボールやハーリングを統括する「ゲーリック体育協会(GAA)」は、同協会に所属する選手がサッカーやラグビーをプレーしたことが発覚すると除名してしまうほどでした。
そして、GAAはダブリン市内に8万人以上を収容する同国最大のスタジアム、クロークパークを所有していたのですが、FAIやIRFUはこのスタジアムを使用させてもらえなかったのです。
■岡田監督が観戦して…
そこで、IRFUは郊外にランズダウン・ロードを所有しており、FAIもこのスタジアムをサッカーの国際試合に使用していたという歴史があるのです。アビバ・スタジアムは、そのランズダウン・ロードを全面改築した近代的なスタジアムです。
さて、そのランズダウン・ロードのメインスタジアムのすぐ裏手にはスタジアムができる前から鉄道が走っていました。そして、スタンドを拡張するときには敷地に余裕がなかったので線路の上にスタンドを建設したため、スタンド下を鉄道線路が走るという珍しいスタジアムが完成したわけです。
1998年4月には、このスタジアムでアイルランド対アルゼンチンの親善試合が行われました。そこで、フランス・ワールドカップの初戦でアルゼンチンと対戦することになっていた日本代表の岡田武史監督もこの試合を視察に訪れ、ガブリエル・バティストゥータなどが構成するアルゼンチンの強力攻撃陣を見て、守備的な3バックで戦うことを決心したと言われています。