わずか1カ月前はチームメイトだった男たちが、相手チームの選手として目の前にいる。川崎フロンターレのMF河原創は数奇な運命を感じていた。  ホームのUvanceとどろきスタジアムに、サガン鳥栖を迎えた13日のJ1リーグ第30節。鳥栖から先月…

 わずか1カ月前はチームメイトだった男たちが、相手チームの選手として目の前にいる。川崎フロンターレのMF河原創は数奇な運命を感じていた。

 ホームのUvanceとどろきスタジアムに、サガン鳥栖を迎えた13日のJ1リーグ第30節。鳥栖から先月20日に完全移籍で加入したばかりの河原は古巣と対峙した一戦で、ダブルボランチの一角として新天地での初先発を果たしていた。

 試合後の取材エリア。やりづらさ、といったものはあったのかと問われた26歳は「特になかったですね」と即答しながら、さらにこう続けている。

「個人的にはそういったところを、あまり考えずに試合へ入ったつもりです。チームが勝つために自分はどうすればいいのか、といったことだけを考えていました」

 川崎の一員として何をすべきか。答えの一端はダブルボランチを組んだ大島僚太を後方支援し、特に攻撃時で横よりも縦の関係を多く作ったポジショニングにある。言うまでもなく、パスワークを含めた大島の攻撃力を最大限に生かすためだった。

「自分は常に周りの選手を見ながらポジションを取る形でプレーしてきましたし、実際にこのチームとしてもそういう形はひとつあったし、準備もしてきました。そのなかで僚太くん(大島)がああいうポジションを取っていました」

■河原創「狙いというのはわかってきた」

 1日の札幌戦で5分間プレーした河原は、J2のヴァンフォーレ甲府に2戦合計で2-1のスコアで勝利した、4日と8日のYBCルヴァンカップ準々決勝でともに先発フル出場。川崎のスタイルに、自身を急ピッチでフィットさせている。

「自分自身としては精いっぱいプレーしているだけなので、フィットしてきているかどうかは、正直言ってわからない部分もあります。ただ、ちょっとずつですけど、選手の動きであるとか、狙いというのはわかってきたかなと思っています。あとは自分の問題として、もう少し視野を広くとってできればと考えています」

 今後へ向けてこう言及した河原は、恐縮そうな表情を浮かべながら、川崎が連敗で鳥栖を迎えていた状況を「知らなかったんですよ」と打ち明け、後半アディショナルタイム91分に献上したPKで2-2の同点とされながら、FW山田新が同100分に決勝点をもぎ取った劇的な勝利をこう振り返った。

「勝つことが一番なので、本当によかったな、というところだけですね。何て言うのかな、いい勝ち方とは言えないじゃないですか。もう少し楽にというか、もう少し試合運びを簡単にできたかなとは思っていますけど、ああいう状況からしっかりと勝ちにつなげられたのは本当に大きいことだと思います」

 河原が思いを代弁した川崎の視線は、次なる戦いへ向けられている。昨シーズンの天皇杯制覇で出場権を手にした、ACLEのリーグステージが来週からはじまる。

ACLEへの思い

 大津高から福岡大、ロアッソ熊本から鳥栖をへて川崎の一員になった河原にとっては初めてのアジアの戦い。山田は前回大会のグループステージで、5試合に出場して無得点に終わった悔しさを糧に臨む雪辱の舞台となる。

「前回大会は不完全燃焼のような思いで終わっていますけど、(今日勝って)またいい形で入れますし、国外のチームと戦える素晴らしい経験であり、自分が成長できる舞台にもなるので、そのなかで勝ちながら成長していければと思う」

 新戦力の河原を含めたチーム全員の抱負を、新エースの山田が表明した。川崎のリーグステージ初戦は18日。敵地で韓国Kリーグの強豪、蔚山HDと激突する。

(取材・文/藤江直人)

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