蹴球放浪家・後藤健生は、世界を巡る。もちろん、サッカースタジアムを訪れるためだ。国内外を渡り歩いてきた蹴球放浪家が選ぶ、世界で最も便利なサッカースタジアムはどこか? ■まさに駅前スタジアム  サガン鳥栖のホームスタジアムは1996年に完成…

 蹴球放浪家・後藤健生は、世界を巡る。もちろん、サッカースタジアムを訪れるためだ。国内外を渡り歩いてきた蹴球放浪家が選ぶ、世界で最も便利なサッカースタジアムはどこか?

■まさに駅前スタジアム

 サガン鳥栖のホームスタジアムは1996年に完成した「駅前不動産スタジアム(略称、駅スタ)」です。不動産企業である「駅前不動産ホールディング」が命名権を獲得したので、2014年からこう呼ばれています。

 このスタジアムはJRの鳥栖駅から近いことで有名ですから、「駅前スタジアム」とはまさに言い得て妙の素晴らしいネーミングです。

 スタジアムが駅から近いのは国鉄(日本国有鉄道=現在のJR)の操車場跡地に建設されたものだからです。そもそも、佐賀県東部にある鳥栖市はJRの鹿児島本線と長崎本線の分岐点として発展した都市です。

 鉄道施設を思わせるスタジアムの金属的なデザインとともに、「駅前スタジアム」という名称も、そうした鳥栖市の歴史を思わせるもののように感じます。

 いずれにしても、鉄道駅から近いスタジアムは大変に便利です。とくに、アウェーの観客にとってはありがたいのではないでしょうか。

 日本には、その他にも駅から近いスタジアムがいくつかあります。

 たとえば、2020年に完成した京都サンガF.C.の本拠地、「サンガスタジアム by KYOCERA」もJR亀岡駅から至近距離にあります。南側サイドスタンド裏のコンコースに出ると、亀岡駅のプラットフォームが目の前に見えます。プラットフォームからの跨線橋を建設すれば、もっと便利になることでしょう。

 そういえば、10月にオープンする「長崎スタジアムシティ」もJR長崎駅のすぐそばだそうですね。

■世界の駅近スタジアム

 世界にも、超便利な駅近スタジアムがたくさんあります。とくに、伝統的にスポーツが盛んな国では、スタジアムへの交通もよく考えられているところが多いような気がします。

 たとえば、マンチェスター・ユナイテッドの本拠地「オールド・トラフォード」。メインスタンドである「サー・ボビー・チャールトン・スタンド」(サウス・スタンド)の脇に、知らないと見落としてしまいそうな、小さな臨時駅が設けられています。マンチェスターとリバプールを結ぶ北部鉄道の駅で、試合があるときだけ使用されます。

 あるとき、試合を観戦した後、記者会見に出席してから外に出てみたら、6万人近い大観衆が入っていたはずなのにもうほとんど人は歩いていませんでした。そして、駅のほうから「最終列車が出るぞ」という叫び声が聞こえてきたので、マンチェスターの中央駅であるピカデリー駅行きの列車に飛び乗りました。

 もう、ほとんど乗客は乗っていませんでした。そして、いよいよドアが閉まろうという瞬間に仕事を終えた警官隊が大きな警察犬を連れてドヤドヤと乗り込んできました。

■スタジアム内にホーム

 プラットフォームから直接スタジアムに行けるような構造の駅もあります。

 有名なのが、スイスのバーゼル市にある「ザンクトヤコブ・パルク」です。FCバーゼルの本拠地です。

 このスタジアムにはスイス連邦鉄道(SBB)の「ザンクトヤコブ・バーゼル」という臨時駅が設けられているのです。ここは本来は貨物線なので、ふだんは旅客列車は走っていないのですが、試合のある日には中央駅「バーゼルSBB」から臨時列車が運行されます。聞くところによると、アウェーチームの本拠地からの臨時列車も走ることがあるそうです。

 この臨時駅で列車を降りて階段を昇ると、もうそこがスタジアムの入口になっているという便利な構造になっています。

 都市の中心部にあるこのスタジアムの前には、トラム(路面電車)やバスの路線もたくさん走っているので、交通の便は非常に良いスタジアムです。

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