本拠地IAIスタジアム日本平内のロッカールーム。7日のV・ファーレン長崎とのJ2第30節を1-1の引き分けで終えた清水エスパルスのMF乾貴士は、ともにシャワーを浴びていたキャプテンのFW北川航也に壁越しに話しかけた。 「最近、俺ら点を取っ…

 本拠地IAIスタジアム日本平内のロッカールーム。7日のV・ファーレン長崎とのJ2第30節を1-1の引き分けで終えた清水エスパルスのMF乾貴士は、ともにシャワーを浴びていたキャプテンのFW北川航也に壁越しに話しかけた。

「最近、俺ら点を取っていないよな」

 乾が最後にゴールを決めたのは、7月14日の大分トリニータ戦までさかのぼる。北川にいたっては、今シーズンで9ゴール目を決めて2桁に王手をかけた6月8日の藤枝MYFC戦を最後に、10試合続けて無得点のまま足踏みが続いている。

 その間に清水は2度の3連勝をマークするなど、6勝1分け3敗の成績を残している。消化試合がひとつ少ないチームは、首位の横浜FCに勝ち点4差の2位と食い下がり、3位の長崎には同8差をつけてJ1への自動昇格圏をキープしている。

 台風10号の影響で中止となり、18日に延期されたアウェイ徳島ヴォルティス戦を含めて、清水のレギュラーシーズンは残り9試合。最後まで何が起こるかわからないと前を見すえながら、長崎の下平隆宏監督も清水戦後にこう語っている。

「手の届く位置から、自動昇格は少し離れてしまいました。仮に横浜FCさんも清水さんも、残り試合を全部勝てばわれわれは届かない」

■乾貴士が感じた現状への思い

 だからといって、自らが置かれた現状を肯定するわけにもいかない。北川と「やっぱり俺らが取らないとあかんな」と、思いを共有した理由を乾はこう語る。

「フォワードの2人が点を取れない、という状況はやはりよくない。今日の試合が引き分けた責任は俺らにある、というところを航也とはしっかりと話し合いました。もう一度、点が取れる2人になる。その責任をしっかりと果たしていきたい」

 昨シーズンは2位のジュビロ磐田に勝ち点わずか1ポイント差の4位で自動昇格を逃し、J1昇格プレーオフの決勝に進むも、試合終了間際にPKを決められて東京ヴェルディと引き分け、規定により昇格する最後の1枠ももっていかれた。

 ほんのわずかな隙でも見せてはいけない。大事な終盤戦に差しかかっているからこそ、乾は今シーズンで14勝2分けと圧倒的な強さを誇ってきたホームで、初めて相手に先制を許した試合展開に苦言を呈さずにはいられなかった。

「勝ち切りたかったのが一番ですけど、それでも最低限というか、追いついて勝ち点1を取れたのはよかった。ただ、先制点を取られたのは、どうしても苦しい試合展開になってしまう点であってはいけない。自分たちが先制する試合展開を含めて、そこはもう一度、チームのみんなで徹底していきたい」

 清水が追いついたのは50分。MFルーカス・ブラガの値千金の同点ゴールをアシストしたのは乾であり、歓喜の場面は自陣からピッチの中央を高速ドリブルで駆けあがって発動させた、乾坤一擲のカウンターから生まれていた。

(取材・文/藤江直人)

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