JITリサイクルインクスタジアムのピッチで、川崎フロンターレの選手は苦しんでいた。18時キックオフの試合の最初の45分間は、攻撃も守備もうまくはまらず、間延びする時間も過ごさなければならなかったのだ。  JリーグYBCルヴァンカップ プラ…

 JITリサイクルインクスタジアムのピッチで、川崎フロンターレの選手は苦しんでいた。18時キックオフの試合の最初の45分間は、攻撃も守備もうまくはまらず、間延びする時間も過ごさなければならなかったのだ。

 JリーグYBCルヴァンカップ プライムラウンド準々決勝の第2戦。第1戦でヴァンフォーレ甲府に1-0で勝利していたとはいえ、試行錯誤の中で失点してしまったのが前半31分のこと。これでトータルスコアが1-1となり、このまま時間が経過すれば延長やPKで決着をつけなければならなかった。

「点を取れない中でも、相手のカウンターを怖がらずにやれたのは成長ですし、自分も腹をくくっていたというか、それ(カウンター)でやられたらしょうがないくらいの気持ちで見ていましたが、後ろの選手がよく頑張ってくれました」

 鬼木達監督が言うように、佐々木旭とセサル・アイダルが組んだCBコンビを中心とした最終ラインが体を張って守ったことで、遠野大弥の土壇場の同点ゴールがチームを勝ち上がりへと導いた。アイダルにとってはこれが、日本国内での公式戦2試合目。佐々木旭とCBを組むのは、これが初めてのことである。

■初めてのコンビで掴んだ手応え

「カバーリングの場面ですごいスピードがありましたし、練習でもなかなか見えてなかった部分なのでびっくりしました」

 これは、試合後に佐々木が話したアイダルとのプレーについての感じたことの一つだ。

 2人は第1戦でも先発出場しているが、佐々木は左サイドバックと右サイドバックの2つのポジションで出ており、CBとしてのコンビを2人は組んではいなかった。JITスタジアムで初めてのタッグで互いに探りながら、流れの中では失点を許さなかった。

 そして、「ラインのコントロールはもっとうまくいくと思うので、4人で迫力を持ってラインを上げるところは、自分がしっかり声を出して4人で合わせていければいい」と、新たな戦力の融合について佐々木はこう手応えを掴んでいる。

 他方、佐々木はアイダルが左CBに入ることで右CBに入る機会も多くなると見込まれる。ここまでポリバレントさを存分に見せる佐々木も「右(CB)の方が難しい」と話すが、「さまざまなポジションで出ることで自分が成長できると思う。“あいつはどこで出てもすごいね”って言われるようなプレーをやっていきたい」と、さらなる成長を目指す。

 その頼もしさは、この日の他のプレーにも見られた。アダイウトンとのスピード勝負でのマッチアップ場面はその一つ。J1でも圧倒的な強さと速さを見せた相手に、佐々木は難なくその動きを封じて見せた。

 筆者が話を向ければ、「ふつうの選手なら最初の段階で体を当てて取れるシーンかなと思ったんですけど、体を当てて入れ替わられたらやばいなって思わされるぐらいの迫力があったので、そういう選手にも勝てるように頑張ってやりたい」と謙虚に振り返り、誇ることもなく自分に矢印を向けてみせた。

■アイダルと今後見せるもの

 まだ来日して間もないセサル・アイダルは練習からまじめに取り組む姿を見せており、ここまで、日本のサッカーに順応すべく時間をかけてきた。その練習態度について、鬼木達監督は「非常に好青年」と笑みをこぼしたこともあるほどだ。

 そんな新戦力と佐々木ら最終ラインとの実戦における連携と積み重ねは、今後、川崎にとって大きな武器となる。ACLEの開幕による過密日程に対応するためにも、選手層の厚さは必須だからだ。

 内容以上に勝ち上がることが重きを成すカップ戦で、結果とともに新しいCBコンビが手応えを掴んだ意味は大きい。これをリーグ戦につなげられるか、そして、ACLEとルヴァンカップでの勝ち上がりにいかせられるか、準々決勝180分の真価はこれから表れる。

(取材・文/中地拓也)

いま一番読まれている記事を読む