サッカーのW杯アジア最終予選が始まった。日本代表は初戦を中国代表と戦い、7-0と快勝。だが、他会場では、ベテランのサッカージャーナリスト大住良之も驚く結果が続いた。 ■日本7-0大勝の理由は「読み」と「老い」  中国に7-0。「ワールドカ…

 サッカーのW杯アジア最終予選が始まった。日本代表は初戦を中国代表と戦い、7-0と快勝。だが、他会場では、ベテランのサッカージャーナリスト大住良之も驚く結果が続いた。

■日本7-0大勝の理由は「読み」と「老い」

 中国に7-0。「ワールドカップ・アジア最終予選」とは思えないスコアになってしまった。過去2年間での日本選手の急激な成長を物語る結果でもあるが、同時に、森保一監督の卓越した「読み」に基づくゲームプランと、対する中国のブランコ・イバンコビッチ監督のあまりの策のなさが呼応し、「共鳴」するように巨大な効果を発揮してしまった結果だった。

 3年前、2021年の9月、やはり「アジア最終予選」の初戦でオマーンを率いて日本と対戦し、1-0で勝った経験をもつイバンコビッチ監督。その戦いをそのまま再現しようと、引いて守り、最後にスピードあるアタッカーで勝負をしようというプランだった。だが、森保監督に完全に読み切られた。試合前に交換された日本のメンバー表を見て、彼は混乱したのではないか。

 1954年生まれ。70歳になったばかりだが、イバンコビッチ監督にはかつての鋭敏さがなかった。3年前とまったく同じプランで日本に立ち向かおうとしたのは、「老い」の証拠だろうか。0-2で迎えた後半から5バックに変更したが、交代も後手に回り、選手の能力の低さもあって、日本に問題をつきつけることはできなかった。

■日本以外で「複数得点」を取ったチームは…

 だが、9月5日にアジア全域で一斉に行われた「最終予選初戦」全9試合を概観すると、「日本×中国」がまったくの例外であり、この予選が非常に厳しいものであるというスタート前の予測どおりであることがはっきりする。

 日本を除けば、残りの17チーム中、複数得点を取ったのはたったの1チーム、「アジア王者」のカタールをアウェーながら3-1で倒したUAEだけなのだ。他の16チームは、1得点が9チーム、無得点が7チーム。9試合中1-0の結果が4試合、1-1の引き分けが2試合、0-0の引き分けが1試合だった。

 そうしたなか、日本と同じC組ではオーストラリアがホームでバーレーンに0-1で敗れ、サウジラビアはやはりホームでインドネシアと1-1で引き分けるというショッキングなスタートとなった。さらにB組では、韓国がホームでパレスチナから得点を奪うことができず、1-1で引き分けているのである。

■5大会連続出場中の豪州は「ベスト布陣」

 2022年カタール大会までワールドカップに5大会連続出場を果たし、カタールではラウンド16に進んだオーストラリアは現在、冬。暖かなゴールドコーストのロビーナ・スタジアムを選んでインドネシア戦を迎えた。気温20度。まず申し分ないコンディションだった。キックオフは現地時間午後8時10分。日本とは1時間の時差があるので、「オーストラリア×バーレーン」は30分ほどキックオフが早かった。

 監督はグラハム・アーノルド。2018年のワールドカップ・ロシア大会から指揮を執っており、経験は豊富だ。GKマシュー・ライアン(ASローマ)、巨漢DFハリー・スッター(シェフィールド・ユナイテッド)、MFマーチン・ボイル(ハイバーニアン)、FWクシニ・イェンギ(ポーツマス)などほぼベストの布陣がそろい、期待は高かった。

 対するバーレーンは、今年1月のアジアカップラウンド16で日本に1-3で敗れたチーム。監督がクロアチア人のドラガン・タライッチに代わり、選手の顔ぶれはアジアカップ時から大きく変わっていた。

 左利きのFWコマイル・アルアスワド、右ウイングのアリ・マダン、左ウイングのモハメド・マルフーン、左サイドバックのアブドゥラ・アルハラシ、GKエブラヒム・ルトファラハなどの5人ほどを除くと、ナイジェリア出身の右サイドバックビンセント・エマニュエルなど、アジアカップ時にはチームにいなかった選手が数多く入っているのである。

■「一発レッド」後もボールを支配し続けたが…

 試合はホームのオーストラリアが7割がた支配する展開。しかし、4-4-2の布陣から時に右ウイングのアリ・マダンと左ウイングのモハメド・マルフーンが両サイドサイドバックの外側に下がって「6-2-2」のような形にして守るバーレーンの守備を崩しきることができない。後半32分にオーストラリアのFWイェンギが相手のノドあたりを蹴って退場になったが、それでもオーストラリアがボールを支配し続けた。

 しかし、後半44分。バーレーンは中盤で右から左に展開し、左サイドバックのアブドゥラ・アルハラシが交代出場したばかりの左ウイング、マハディ・アルフマイダンに渡して内側を走り抜け、アルフマイダンからリターンボールを受けて突破。アルハラシは中央に走り込んできたFWアブドゥラ・ユスフに合わせようとしたが、これに対応しようとしたオーストラリアDFスッターの右ひざにボールが当たり、GKライアンの逆をついてゴールに吸い込まれて決勝点となった。

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