「巨人3-2DeNA」(7日、東京ドーム) 時計の針は午後6時41分を指していた。延長十二回2死で迎えた初球、巨人・オコエがバットを振り切った瞬間、一瞬の静寂が生まれた。ボールの着地点を確認した阿部監督も、「我を忘れた」とベンチを飛び出し…

 「巨人3-2DeNA」(7日、東京ドーム)

 時計の針は午後6時41分を指していた。延長十二回2死で迎えた初球、巨人・オコエがバットを振り切った瞬間、一瞬の静寂が生まれた。ボールの着地点を確認した阿部監督も、「我を忘れた」とベンチを飛び出した。激戦に決着を付けた劇的なサヨナラホームラン。総力戦で首位をキープした。

 打席に立つ直前、阿部監督から声が飛んだ。「一発、狙ってこい」-。次打者は4番・岡本和だが迷いは消えた。「初球、真っ直ぐがきたら絶対にいってやろうと思った」。狙い通り141キロをフルスイングした。佐々木千には8月17日の対戦(横浜)でも代打で二塁打。好相性も背中を押した。

 九回。指揮官はビハインドの展開で、今季初めて守護神・大勢を投入。「何が起こるか分からない」と一戦必勝のメッセージに選手が応えた。運も味方する。2死一塁から長野の三ゴロを柴田が悪送球。九死に一生を得ると、この日昇格したばかりの中山が、詰まりながらも右翼へ同点打を放った。今季最多19残塁。首位の重圧か、拙攻が続く中で若い力が輝いた。

 DeNA2連戦は球団創設90周年を記念した「Tiffany&Co.DAY」。夏場、高級ブランドを身に付けないオコエは「ユニクロばかりです。立派なブランドですから」と胸を張る。この日、戦闘服にしたティファニーには、古いフランス語で「神の出現」の意味がある。負ければ首位陥落の一戦で輝きを放った苦労人。土壇場から“ユニクロユーザー”が、神の一打でチームを救った。