ジュニア世代の国内最高峰のテニス大会に位置づけられる「全日本ジュニアテニス選手権」の女子12歳以下シングルスで、東北代表として出場した山形市立第七小6年の奥山し渚(な)さん(12)=インドアテニススクールベルズ=が優勝を果たした。昨年のダ…

 ジュニア世代の国内最高峰のテニス大会に位置づけられる「全日本ジュニアテニス選手権」の女子12歳以下シングルスで、東北代表として出場した山形市立第七小6年の奥山し渚(な)さん(12)=インドアテニススクールベルズ=が優勝を果たした。昨年のダブルス優勝に続く快挙だ。

 主要大会で好成績を収めてきた奥山さんは今年、12歳以下の国内ランキングで1位を保っている。ただ5月に行われた全国選抜ジュニア選手権と、8月にあった全国小学生選手権は本命視されながらそれぞれ準優勝に終わり、涙をのんだ。

 「『第1シードだから勝たないと』とプレッシャーを感じちゃって。消極的なプレーになって、どんどん相手に攻められて負けてしまいました」と奥山さん。

 メンタル面の課題は以前から二人三脚で歩んできた父・和征(かずゆき)さん(52)とも認識していたが、なかなか克服できないでいた。

 小学生選手権で敗れてからジュニア選手権開幕までの2週間、親子で徹底的に話し合った。

 気持ちの整理をできないまますぐに次のプレーに移ってしまって悪循環にはまるなど、調子が悪いときの自分の行動や解決策をノートに書き出し、自分を鼓舞する言葉も並べた。

 そして臨んだ今大会。前哨戦の2大会で敗れた対戦相手を準決勝と決勝で相次いで破ってリベンジを果たし、栄冠をつかんだ。

 8月31日に東京・有明テニスの森公園であった決勝は、1セットを先取される苦しい展開。休憩中にノートをめくり直しながら深呼吸し、「まだ1セットある」と気持ちをもう一度奮い立たせた。その様子に、間近で見守っていた和征さんも「これまでのし渚じゃないな」と感じたという。

 本来のコートを広く使った伸び伸びとしたプレーが戻った奥山さん。ネットプレーなどで積極的にポイントを取りに行った結果、2セットを連取し、念願の日本一を勝ち取った。

 「試合が終わった瞬間はホッとしたという気持ち。応援の皆さんに祝福されてから、うれしさがこみ上げてきました」

 大会ではダブルスでも同じクラブ所属の星柚夢さんと8強入りを果たした。

 この1年、大きな環境の変化もあった。

 昨年秋、世界を目指す有望な女子ジュニア選手を発掘する富士薬品主催の大会で優勝。年2回の海外遠征に3年間無償で参加できるプログラムのメンバーに選ばれた。

 昨冬は米国、今夏は欧州と各1カ月親元を離れ、同世代の仲間と武者修行に出かけた。遠征中は複数の大会にダブルスを含めて出場。実際に優勝するなど、結果も残している。

 欧州ではあまり得意ではない土のクレーコートを経験。フォアハンド主体の戦い方を間近で見て、自分のプレーに採り入れた。

 「向こうは小さい子でもどんどん打ってくるし、ボールがライン際に飛んだ時の判定でも審判にズバズバ言うので、自分も主張するようになった。ボールが速くなくてもコースがいい人とかもいて、どう戦うかを学べた。とてもいい経験です」と振り返る。

 今後の目標を尋ねると、「14歳以下の大会でもしっかり上位に入り、海外遠征でもいっぱい学びたいです」と目を輝かせた。(兼田徳幸)