今年1月、ラグビー日本代表の指揮を再び執ることになったエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)は「次世代(の台頭)がジャパンラグビーの大きなカギとなる。若手を育成しなければならない」と語り、春から夏にかけて高校生や大学生中心のU20日本代…

 今年1月、ラグビー日本代表の指揮を再び執ることになったエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)は「次世代(の台頭)がジャパンラグビーの大きなカギとなる。若手を育成しなければならない」と語り、春から夏にかけて高校生や大学生中心のU20日本代表の現場にも積極的に顔を出していた。

 そこでジョーンズの目に留まったのは、どんな選手なのか。9月7日、いよいよ開幕する大学ラグビー対抗戦に先駆け、若き才能たちを紹介する。


日本代表に新たな風を送り込んだ20歳の矢崎由高

 photo by Saito Kenji

 まずひとり目は、今年6月に日本代表デビューを果たした早稲田大学2年のFB矢崎由高(やざき・よしたか)だ。6月のイングランド戦から8月のカナダ戦まで6試合連続で先発した矢崎は、身長180cmの体躯と抜きん出た走力を武器にそのポテンシャルを遺憾なく発揮した。

※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)

「矢崎が将来、30回、40回とテストマッチに出場していったらどれほどの選手になれるか、考えると恐ろしい」

 ジョーンズHCも堂々としたプレーに目を張り、今後の成長に大きな期待を寄せている。

 矢崎は大阪育ちながら、高校は神奈川の名門・桐蔭学園に進学。高校1年で早々にレギュラーの座を獲得し、花園優勝と最優秀選手賞を手にした。そして早稲田大学に進学すると、飛び級でU20日本代表にも選出。昨シーズンは8試合で8トライを挙げて、赤黒のジャージを鮮やかに彩った。

 今シーズンもU20日本代表に選ばれて、4月の「パシフィックチャレンジ」では優勝に貢献。トップスピードは南アフリカ代表WTBチェスリン・コルビと並ぶ世界レベルの時速35.5kmを記録した。その才能をジョーンズHCが見逃すはずもない。

「日本代表での厳しくも温かい指導は、自分の成長につながった。ただ、まだ世界レベルには達していないと思うので、もっと成長したい」

 カナダ戦後にチームを離れて早稲田に戻った矢崎は、初の代表で多くの経験を掴んだようだ。

【超速ラグビーに合ったプレーが高評価】

 続いて紹介するのは、帝京大学2年のPR森山飛翔(もりやま・つばさ)。身長180cm・体重112kgの見事な体躯を誇る森山は6月、日本代表に準ずるJAPAN XVメンバーのひとりに選ばれて、マオリ・オールブラックス戦に途中出場した。

 森山は京都出身で、6人兄弟の末っ子。兄ふたりはリーグワンでプレーしており、彼自身も京都成章高校で1年からレギュラーを獲得して花園準優勝に貢献した逸材だ。高校3年時はNo.8を務めたが帝京大では右PRに戻り、昨シーズンはルーキーで10試合に出場。主に控えからの選手ながら大学選手権優勝に貢献した。

 森山は5月末の菅平合宿でのアピールが功を奏し、6月の日本代表メンバーには最年少FWとして選出された。「ボールキャリーやオフザボールの動きが評価されたのかな」と語る。

 代表では、貴重な経験も積めたという。元オールブラックスの名PRオーウェン・フランクス(日本代表アシスタントコーチ)とスクラム練習に取り組めたことだ。「オーウェンさんと組んで、最初は(指導してくれる)技術よりも感動のほうが大きかった(笑)」(森山)。この経験を糧に、今シーズンは4連覇を目指す帝京大のFWの中心としてスクラムでチームを引っ張る覚悟だ。

 3人目は明治大学2年のWTB海老澤琥珀(えびさわ・こはく)。7月のU20世界大会で3試合6トライを挙げ、8月に初めて日本代表に招集された。

 東京都出身で、中学時代はHOとしてプレーしていたが、兵庫の強豪・報徳学園でWTBに転向。2年時からレギュラーを務め、3年時には春の選抜と夏のセブンズで優勝するも、花園では準優勝に終わった。

 昨シーズンは明治大で「11番」のレギュラーを掴み、大学選手権決勝を含む6試合で5トライを挙げた。そのスピードと決定力がジョーンズHCに評価され、「超速ラグビーに合ったプレーをしている」と称賛された。

 代表合宿に参加した海老澤は「すごく刺激をもらえました。こういう機会を与えてもらうことで、これまで見えてなかったものが見えてきた」と自信を深めたようだ。合宿ではジョーンズHCからも「エビー」と呼ばれるほど可愛がられている。今季も紫紺のエースとしてトライを量産すれば、日本代表への道もさらに明るくなってくるだろう。

【大学デビュー戦でいきなりハットトリック】

 そして最後に紹介するのは、慶應義塾大学1年のFB小野澤謙真(おのざわ・けんしん)。日本代表の名WTBである父・宏時氏を持つ19歳だ。

 小学校時代は横浜F・マリノスのスクール、中学から父の母校・静岡聖光学院に進学後も清水エスパルスSSジュニアユースでプレーするほどサッカーにものめり込んだ。高校からラグビーに専念すると早々に頭角を現して花園にも2度出場し、高校日本代表としてイタリア遠征も経験。そして今年5月には大学デビューとなった春季大会で、いきなりハットトリックも達成した。

 その活躍を見ていたジョーンズHCは、すぐさま菅平合宿に招集。日本代表やプロ選手との練習は、19歳の小野澤にとって大きな財産となったことだろう。「ランでは自分の強みを発揮できたが、プロ選手とプレーすることで何をやるべきかが明確になった」と語る。

 2027年ラグビーワールドカップに向けてスタートを切った新生エディージャパンは、大学生に対して広く扉を開いている。今年の春から夏にかけては、早稲田大学主将のHO佐藤健次、帝京大学主将のFL/LO青木恵斗、帝京大学4年のLO本橋拓馬、明治大学3年のFL利川桐生、早稲田大学3年のCTB福島秀法、京都産業大学2年のSH村田大和が日本代表活動を経験した。

 ジョーンズHCは「大学に戻っても高いスタンダードでトレーニングを続け、大学ラグビーのレベルを引き上げてほしい」と、さらなる成長に大きな期待を寄せている。その言葉に奮起した彼らが今シーズン、大学ラグビーでどんな活躍を見せてくれるのか楽しみだ。