エディージャパンはカナダを相手に”王者の戦い”はできなかった(C)産経新聞社 日本時間の8月26日(月)に行われたパシフィックネーションズカップの第1戦でラグビー日本代表(以下ジャパン)はカナダ代表と対戦し、…

エディージャパンはカナダを相手に”王者の戦い”はできなかった(C)産経新聞社

 日本時間の8月26日(月)に行われたパシフィックネーションズカップの第1戦でラグビー日本代表(以下ジャパン)はカナダ代表と対戦し、55-28で勝利した。両チームの対戦は8年ぶりで、通算対戦成績はジャパンの18勝10敗4分。ジャパンは2009年から続くカナダ代表戦の連勝を7に伸ばした。第2次エディージャパン体制下でのテストマッチ初勝利でもあった。

【関連記事】米女子ラグビー選手、パリ五輪で獲得の銅メダルは「少し痛んできたけどゴージャス」 トークショーで言及「しっかりとした作り」

 この試合実施前の世界ランキングはジャパンが14位で、カナダが21位。退場者でも出ない限りは、ジャパンの優位は動かない順位差があるこの対戦、勝利はもちろん、試合内容も問われる一戦だった。

 8本のトライを奪い、55得点を挙げた攻撃面については、強化の効果がある程度表れていると言ってよいだろう。テンポの速い球出しを連続させることにより、相手ディフェンス網に綻びを作り、そこを鋭く突いて大きくゲインするというゲームプラン通りの展開で、試合開始直後から流れをつかみ、前半31分で38-0と大きくリードを奪うことに成功した。

 前半でここまで差がついてしまえば、リードを許しているチームは逆襲のリスクが高いプレーを選択して状況の打開を図るしかなくなるが、リードしているチームは、捨て身で攻めてくる相手のミスを待って、そのミスにつけ込んで逆襲するいという、余裕ある戦い方ができるようになる。ニュージーランドが格下のチームを相手にした時のような”王者の戦い”ができるのだ。

 しかし、まだまだジャパンは王者の戦いができるほどには成熟していなかったし、カナダも自分たちの強みを発揮する方法を見失わなかった。前半終了間際に1トライ1ゴールを返すと、後半5分過ぎからは密集近辺に次々とパワーランナーを突っ込ますというフィジカルの強さを存分に活かした攻めでジャパンの防御網をぶち破り5分、10分と2連続トライを挙げて追い縋ってきたのだ。

 サマーシリーズのイングランド戦で観た光景が繰り返された形となった。幸いにしてカナダにはこの戦法を継続し切るだけのフィットネスが備わっていなかったので2本で済んだが、フィジカルの強さでカサにかかって攻めてくる相手への対応策はこれからの研究課題だろう。

 この2トライでジャパンにはリードしているにも関わらず焦りが見られ、ノックオンやパスミスなどのハンドリングエラーが度々見られるようになった。カナダ代表にはそのミスを突くだけの素早さがなかったために致命傷には至らなかったが、ランキング上位国はこうした隙を決して見逃さない。個人としてもチームとしてもより一層のスキルアップが求められる。

 そして、ジャパンが快勝止まりで、圧勝できなかった最大の要因は、サマーシリーズを通して相手を押し込み続けたスクラムで苦戦したことだ。

 ペナルティーを3本、フリーキックを1本与え、押し込んでボールを奪ったり反則を誘ったりする場面がほとんどなかった。スクラムにおいて右プロップは、通常、左腕でフッカーのジャージの左脇の部分を掴んでパックを固めるのだが、カナダの右プロップは左腕を真後ろに下げ、2番のパンツを掴んでいた。先発の右プロップ独自のパック方法かと思ったが、交代で出てきた右プロップも同じパック方法を用いていた。恥ずかしながら筆者はこのパック方法を初めて観たのだが、スクラムの一番のキープレーヤーである右プロップが、このパック方法を用いてジャパンのスクラムと互角以上に組み合えたということは、それなりに効果がある方法なのかもしれない。

 収穫よりも課題が目についた一戦ではあったが、とにもかくにも、サマーシリーズ終盤の悪い流れはこの勝利でいったん断ち切れたはずだ。まずは、次戦のアメリカ戦にも勝って、フィジー、サモアといった格上チームが待ち受ける準決勝に駒を進めたいところだ。

[文:江良与一]

【関連記事】「超速ラグビー」は道半ば 大敗のイングランド戦で見えたエディー日本の課題と収穫

【関連記事】【エディージャパン検証】問われる「遺産」の活かし方 数的不利でも「超速ラグビー」の片鱗は見せたが【ラグビー】

【関連記事】「超速ラグビー」が噛み合わないエディージャパン 「経験と知識を蓄積」させるための次の一手は?