マインツに加入した佐野海舟がウニオン・ベルリンとのブンデスリーガ開幕戦でスタメン出場し、85分までプレーした(結果は1-1のドロー)。「チームの力になれなかったんで、ただただ悔しい。これからもチームの力になることだけを考えてやるしかないと…

 マインツに加入した佐野海舟がウニオン・ベルリンとのブンデスリーガ開幕戦でスタメン出場し、85分までプレーした(結果は1-1のドロー)。

「チームの力になれなかったんで、ただただ悔しい。これからもチームの力になることだけを考えてやるしかないと思います」

 試合後はうつむき気味に開口一番、小声で悔しそうに話した。それでも、ドイツ1部リーグで新加入ながら開幕スタメンというのは、決して悪いスタートではない。


佐野海舟はブンデスリーガで結果を残せるか

 photo by Watanabe Koji

 そもそも、最近ではJリーグからドイツに移籍する場合、直接ブンデス1部のクラブに加入できること自体が減っていた。

 2022年のカタールワールドカップメンバーだった町野修斗(前・湘南ベルマーレ)が大会半年後に加入したのは、当時ドイツ2部だったホルスタイン・キール。2021年夏、東京オリンピック直前に田中碧が加入したデュッセルドルフも2部。同時期に伊藤洋輝は1部のシュツットガルトに加入したが、それはセカンドチームとの契約だった。

 5大リーグに限らず、早いうちに海外へという傾向は年々強くなり、移籍先も多様化しているなか、日本から(他国や下部リーグ、育成チーム、セカンドチームを経ずに)直接ブンデス1部と契約した最後の選手は2020年夏に横浜F・マリノスからウニオン・ベルリンへ移籍した遠藤渓太で、その前は2017年夏にサガン鳥栖からフランクフルトに入った鎌田大地までさかのぼらなくてはならない。

 という背景もあって、佐野は久々に日本からブンデスリーガに直接やってきた選手として、大きな期待を寄せてしまう存在なのだ。

 開幕戦の1週間前に行なわれたドイツカップ1回戦ヴィースバーデン戦では、いきなりフル出場して3-1の勝利に貢献。ボー・ヘンリクセン監督から高い評価を得ていた。しかし同じ公式戦とはいえ、3部のヴィースバーデンと1部のウニオン・ベルリンではまったく勝手が違ったようだ。

【Jリーグとブンデスリーガとの違いは...】

 このウニオン・ベルリン戦で佐野は、3-4-2-1システムのボランチで出場。10分には縦パスに抜け出してペナルティエリア内から右足シュートも放ったが、それは相手ディフェンダーに防がれた。シュートはこの1本にとどまったが、モチベーションは高く、豊富な運動量でピッチを動き回った。

 だが、プレー内容はいかんせん空まわり。なかなかボールに絡めず、取りにいっても奪いきれず。特に前半はブンデスリーガの厳しさを感じたに違いない。本人はこう振り返る。

「今まで感じたことのないプレッシャーだったり、相手の強度だったりをすごく感じました。でも、これにいち早く慣れないといけないと思います。試合に出ている以上、すぐに慣れてやるしかないと」

 互いに中盤で潰し合うようなサッカーで、徹底して相手のよさを消しあうなか、いかに自身の存在感を発揮するか、開幕戦では苦戦したようだった。

 後半に入り、53分にナディーム・アミリのフリーキックが直接決まってマインツが先制した。佐野も前半に比べれば、ボールに絡む回数も増え出した。

 しかし、74分に失点。ウニオンは左サイドのロビン・ゴセンスからのパスをティム・スカルケがボックス手前左で受け、それを中央で待つラースロー・ベーネスへ。ベーネスはターンして体勢を整えると、防ごうと戻ってきた佐野をモノともせずシュート。これがゴール右隅に突き刺さって同点となった。

 至近距離でシュートを打たれてしまった佐野は、しばらくの間ピッチに倒れこみ、立ち上がることができなかった。

「あれは防がないといけないと思います。戻りながらという難しい場面ではありましたけど、防がないといけない」

 Jリーグとの違いを感じた場面だったのでは?

 そう質問すると、「Jリーグではあまり感じられない場面だったと思いますけど、ここでやっている以上、そういうことは言っても仕方ない。あそこを止めるか、止められないか、ということだけだと思います」と、違いを言い訳にはしなかった。

【弟・佐野航大は「いつか一緒に代表で」】

 試合はこのまま1-1で終了。マインツはホームでの開幕戦を勝利で飾ることはできなかった。ヘンリクセン監督は「相手よりクオリティがあった。勝つべき試合だった」とコメント。昨シーズン後半に監督に就任し、パスサッカーにスタイルを変えつつチームを1部に残留させたヘンリクセン監督の手腕が今後どう発揮されるか、今シーズンも楽しみである。

 そのヘンリクセン監督から、佐野は攻撃の役割も与えられているという。

「今まで自分はあんまり前に行くようなタイプではなかったし、求められているのは守備だったのですが、このチームでは前にどんどん出ることを求められている。なので、やっぱりゴールを狙うことも必要になっていくかと思います。ゴールは取れるだけ取らないといけないし、アシストもそう」

 また、佐野は「ここでサッカーをやるだけ。サッカーができることに感謝して、一日一日を過ごしていく」とも話し、あらためてドイツで再出発する決意を感じさせた。

 ひと足早くオランダ1部NECで活躍する弟・佐野航大は以前、「将来は日本代表の中盤で、ふたりでプレーしたい」と目を輝かせながら語っていた。佐野兄弟が日本代表のピッチで並び立つ日が来るのかも、合わせて期待したい。