(17日、第106回全国高校野球選手権大会3回戦 大社3―2早稲田実) 守備範囲が広く、島根大会から失策ゼロだった大社の中堅手・藤原佑選手(3年)が、今夏初めて手痛いミスをした。 同点の七回表、相手の先頭打者が中前にゴロの安打を放つ。球は差…

(17日、第106回全国高校野球選手権大会3回戦 大社3―2早稲田実)

 守備範囲が広く、島根大会から失策ゼロだった大社の中堅手・藤原佑選手(3年)が、今夏初めて手痛いミスをした。

 同点の七回表、相手の先頭打者が中前にゴロの安打を放つ。球は差し出した藤原選手のグラブの下を通過した。深い外野を転がる間に打者走者に生還され、緊迫した試合の終盤で1点を勝ち越された。

 「打者を二塁に行かせたくない。早く返そう」。その意識が「グラブを少し(地面から)上に離してしまった。落ち着いてやっておけば良かった」。

 だがその回の攻守交代でベンチに戻る際、全力で走った。気落ちした顔は見せられない。その姿に、球場全体から励ますように「今まで聞いたことのない歓声」が上がった。

 ベンチで、最初に馬庭優太投手(同)が声をかけてくれた。「大丈夫や。まだいける。笑顔でやろうぜ」。ほかのみんなも「お前なら大丈夫や。絶対負けへん」と肩を組んでくれた。

 「申し訳なさとうれしさで言葉にならなかった」。この試合では十分に挽回(ばんかい)はできなかったが、九回裏には走者を2人進める犠打を決めてチームに勢いをつけた。

 大社は延長に入ってからもいきいきとプレーした。十回表無死一、二塁で、三塁手の園山純正選手(同)は「オレのところに飛んでこい」と投球と同時に猛然とダッシュ。一塁手とともに打者へ向かっていく「ブルドッグ」というシフト。「ぶっつけ本番だった」。相手打者のバントをすばやく捕って三塁へ送球し封殺。続く十一回表も三ゴロをさばき併殺とした。

 この夏、公式戦初出場の安松大希選手(2年)は十一回裏、代打で好機を広げるバント安打を決めた。「三塁側に転がすことだけを考えた。今まで練習でやって来たことを貫いた。死ぬほど練習してきたから自信をもって打席に立てた」

 馬庭投手は試合後、「辛い試合だったが、藤原君のせいではない。藤原君には、いつも助けてもらっている」と振り返った。

 藤原選手は島根大会で18打数12安打、12盗塁と優勝の立役者の1人だった。だが、「甲子園に来てから思うような結果が出ず、何でもいいから仲間を助けたい。次は得意の足を生かしたい」。準々決勝での活躍を誓った。(中川史)