「全国高校野球選手権・2回戦、早実1-0鶴岡東」(15日、甲子園球場) 2回戦4試合が行われ、早実(西東京)が延長タイブレークの末、鶴岡東(山形)に今大会初となるサヨナラ勝利を飾った。2年生ながら背番号1を背負う中村心大(こうだい)投手が…

 「全国高校野球選手権・2回戦、早実1-0鶴岡東」(15日、甲子園球場)

 2回戦4試合が行われ、早実(西東京)が延長タイブレークの末、鶴岡東(山形)に今大会初となるサヨナラ勝利を飾った。2年生ながら背番号1を背負う中村心大(こうだい)投手が、144球の熱投で10回完封勝利。延長十回裏には自ら決勝打を放った。これで報徳学園に並ぶ春夏通算68勝目。当時1年生の日本ハム・清宮幸太郎内野手(25)を擁した2015年以来となる16強入りを果たした。

 快音が響くと、コンバットマーチが大歓声へと変わった。息の詰まる投手戦に終止符を打ったのは、誇り高き背番号1を背負う2年生。中村はすがすがしい笑顔で、先輩たちの元へ駆け寄った。

 「ここで決めてやろうと、強い気持ちを持って行きました」

 この日最後の144球目を投じた際、左太もも裏をつるアクシデント。ナインに支えられるようにベンチへ下がった。それでも、同点で迎えたタイブレークの延長十回裏1死満塁では、5分間の治療による中断を経て打席へ。その初球だった。

 「自分のせいで相手にも迷惑かけたんですけど、中断明けの初球は思い切り行こうと決めていました」。スライダーを迷いなく振り抜いた打球は右翼手の頭上を越えるサヨナラ適時打。9年ぶりの16強入りを導き「サヨナラ打を打ったことがなかったので、初めての景色というか、自分だけの時間をつくり出せた」と充実の表情を浮かべた。

 投げては直球、変化球ともに丁寧に制球し10回完封。7回3四球4失点だった鳴門渦潮との初戦から「体の回転に左腕が追いついていなかったので、タイミングを合わせました」と修正したことが奏功した。六回2死までは無安打に封じ、4安打中3本が内野安打と、ほとんど相手に捉えさせず。早実の左腕で完封勝利を挙げたのは、1957年夏に当時2年生の王貞治が達成(延長11回ノーヒットノーラン)して以来67年ぶりの快挙。「直球をコーナーに投げ分けられて、ストライク先行で自分のパターンに持ち込めた。(王氏は)偉大な先輩。このエースナンバーを背負う責任感は感じます」と恐縮した。

 3月に左肘の内側側副靱帯を損傷し、約2カ月間のノースロー。投球を再開したのは6月上旬だった。ただ「自分を一から見直せて、あの時期がなかったら今の自分はない」と左腕。苦しい時間も前向きに捉えた。

 京都出身で、「理想像」と語る父・秀典さんは天理で甲子園に出場。ただ、自身は元日本ハム・斎藤祐樹氏を擁した2006年夏のVを映像で見て早実に憧れ、同校へ進学した。「チームを勝たせられるのがエース。次も一戦必勝で戦いたい」。憧れのユニホームでエースナンバーを背負う男が、名門の再びの頂点を導く。

 ◆中村 心大(なかむら・こうだい)2007年7月17日生まれ。17歳。京都府出身。177センチ、83キロ。左投げ左打ち。小学1年から軟式の西陣中央スポーツ少年団で野球を始め、烏丸中では軟式の京都ベアーズに所属。早実では1年夏から背番号18でベンチ入り。50メートル走6秒6、遠投100メートル。最速145キロ。