<全国高校野球選手権:智弁学園2-1健大高崎>◇2回戦◇14日◇甲子園バットをしっかりと壁に立てかけられないくらい、体がふらついていた。試合に敗れ、春夏連覇もなくなり、健大高崎(群馬)・箱山遥人捕手(3年)の感情があふれ出る。「もう、2度と…

<全国高校野球選手権:智弁学園2-1健大高崎>◇2回戦◇14日◇甲子園

バットをしっかりと壁に立てかけられないくらい、体がふらついていた。

試合に敗れ、春夏連覇もなくなり、健大高崎(群馬)・箱山遥人捕手(3年)の感情があふれ出る。

「もう、2度と高校野球ができない…。すごい、悲しいです…」

目元を押さえながら叫ぶように発した。「最後の夏で初めて夏の甲子園に来られて、すごい注目度の中で春夏連覇という期待をされた中で臨んで、こんなに早く負けてしまって。すごい舞台でしたけど、とても悔しいです」と続けた。

3年生28人の輪を「誰1人欠けてもここまで来られなかった」と強く思ってきた。2日前、指導者たちに進言した。

「春夏連覇するには、3年生がここで登板するしかないと思います」

優勝したセンバツは5試合全てで佐藤龍月投手、石垣元気投手(ともに2年)が投げきり、この夏も1回戦は2年生の登板のみ。捕手として主将として、これまでと同じように意見を堂々と大人に伝えた。

「監督も部長もコーチも優しくて選手ファーストなので」と言うが、箱山の努力や苦しみを知るからこそ大人たちも受け入れる。皆でやりきっての最後を「日本一にはなれなかったですけど、日本で一番仲間に恵まれて最高なキャプテン生活を送れました」と胸を張る。

青柳博文監督(52)は「しっかり切り替えのできる子」と箱山を評する。そんな主将は、だいぶ言葉も落ち着いてきた。

あらためて、高校野球とは。

「もう2度と、こういう幸せな2年半は過ごせないと思います。この先、大観衆の中で熱い気持ちを持って泥くさくやる野球は、2度とできないと思うので。人生90年、100年とありますけど、この2年半は80年分くらいの濃い時間を過ごせたと思います」

そんな濃密な時間も負けを知って終わり、甲子園の土は拾わずに群馬へ帰る。

「思い出作りで来た場所じゃないので。あとは、プロになってここに戻ってきたいという思いがあったので、拾わなかったです。次のステージで借りを返したり、培ったものを出していきたいと思います」

乾いた涙は甲子園球場を出て3年生たちと会えば、また潤むだろう。泣いて泣いて、泣き尽くして。まずは28人を代表してこの秋、プロ野球を志す。【金子真仁】