今大会で大躍進を遂げた代表格といえばフェンシングだ。競技発祥国のフランスで金2個含め男女で過去最多5個のメダルを量産。活躍の裏には外国人指導者の存在が光った。彼らは世界レベルの技術はもちろん、巧みなコミュニケーション、言葉の表現力で、謙遜…

 今大会で大躍進を遂げた代表格といえばフェンシングだ。競技発祥国のフランスで金2個含め男女で過去最多5個のメダルを量産。活躍の裏には外国人指導者の存在が光った。彼らは世界レベルの技術はもちろん、巧みなコミュニケーション、言葉の表現力で、謙遜しがちな日本人に確かな「自信」を植え付けた。

 金メダルの男子フルーレ団体を指導するルペシュー氏(42)は21年東京五輪のフランス代表で金メダリスト。レジェンドが最初に学んだ日本語は「気にしない」や「大丈夫」。自信のない日本人に暗示をかけるかのように毎日、そう声をかけた。「一度も否定されたことがない」と言うのは松山恭助(27)=JTB=で「自信を持って」も毎日のように言われた。経験者の言葉は重い。大谷翔平の「今日だけは憧れるのをやめましょう」に通じるものがあった。

 8強の男子バレーは元フランス代表のブラン監督(64)。52年ぶり金メダルは届かずも、世界ランク2位など日本を押し上げた。精神面を指導する時は、通訳に書き出したメモを渡し理解してもらってから選手に伝える。こまやかな配慮で構築した信頼関係は退任を表明した後、高橋藍らの涙にも表れていた。

 48年ぶりに自力で五輪に出場したバスケ男子は、21年東京五輪で女子を銀メダルに導いたホーバス監督(57)が指揮した。就任当初の考えが「男子は『勝つ』という自信がない。直したい」。バレー男子と同じく魂をつくってから体をつくっていく強化の手法だった。本大会では準優勝したフランスからあと一歩のところで大金星を逃し、弱小国・日本のイメージを覆した。

 体格差が課題となってきた競技。海を渡ってきた“名将”たちは、指導力と発言力で、日本人選手の眠ったポテンシャルを引き出した。(小林 玲花)