蹴球放浪家・後藤健生は、どこでもサッカーを楽しむ。世界中で、そして空の上でも、サッカーのことを忘れない。ここでは、空の上からのサッカーの味わい方をお伝えする。 ■しばらくすると「日産スタジアム」  成田空港から西に向かう便に乗って、右側の…

 蹴球放浪家・後藤健生は、どこでもサッカーを楽しむ。世界中で、そして空の上でも、サッカーのことを忘れない。ここでは、空の上からのサッカーの味わい方をお伝えする。

■しばらくすると「日産スタジアム」

 成田空港から西に向かう便に乗って、右側の席に座っていれば、離陸してからしばらくすると埼玉スタジアム2002の特徴的な白い屋根が見えてきます。羽田空港から西に向かうと、多摩川を渡ったあたりに等々力陸上競技場が見えますし、それからしばらくすると日産スタジアムが見えてきます。

 そのまま、目を凝らしていると相模湾上空に差し掛かったところで平塚のレモンガススタジアムも見えてきますし、その後もJリーグでお馴染みのスタジアムが次々と見つかります。

 大阪空港へのアプローチでは東大阪市の花園ラグビー場がよく見えます(今では、J3リーグのFC大阪のホームにもなっています)。

■上空から見た「サッカーの聖地」

 海外でもそうです。1996年にEURO観戦に行ったときは、モスクワ経由でしたが(「蹴球放浪記」第21回「モスクワ名物。収容所ホテル」の巻)、ロンドン到着前にアエロフロート便の窓からウェンブリー・スタジアムがよく見えました。ツインタワーで有名だった旧ウェンブリーです。

 ウェンブリーでの観戦というのもこの旅行の目的の一つだったので、そのウェンブリーが間近に見えてちょっと感激してしまいました。

 さらに高度が低くなっていくと、緑の芝生に加えてゴールポストも見えてきます。

 英国系の国に行けば「あっ、サッカー場ではない! ラグビー場だ!」ということもあるでしょう。昨年、女子ワールドカップ観戦にニュージーランドに行きましたが、予想通り、ほとんどがラグビー場でした。もちろん、目的地がアメリカ合衆国だったら、緑の芝生の多くはアメリカン・フットボール場ということになります。

 また、英国系の国では楕円形のクリケット場の芝生もたくさん見えますし、アメリカや日本だと、ちょっと変わった形をした野球場もたくさん目に入ります。

■パイロットが敢行「さすが」の応援

 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスのエセイサ空港のそばにはアルゼンチン・サッカー協会(AFA)のトレーニング・センターがあります。代表チームが合宿するところです。また、トレーニング・センターのそばには国立ベースボール・スタジアムもあるので、南米では珍しい野球場が見えるかもしれません。

 ブエノスアイレスには、もう一つ、近距離便専門の「アエロパルケ」と呼ばれる空港もあるのですが、この空港はリーベルプレートのホーム「モヌメンタル」のすぐそばにあるので、機内からもスタジアムが見えることでしょう。

 1978年のアルゼンチン・ワールドカップ決勝のキックオフ直前に、突然アルゼンチン航空の旅客機がスタジアム上空を超低空飛行したことがありました。パイロットがアルゼンチン代表の応援のために低空飛行を敢行したのです。

 当時、全国民がアルゼンチン代表に熱狂的な声援を送っていました。

 経済の停滞や軍事政権による弾圧が続く中で、代表チームが自国開催のムンディアル(ワールドカップ)で決勝に進出したからです。しかも、セサール・ルイス・メノッティ監督の哲学通りの攻撃的サッカーで、結果を出したのです。

 そんな雰囲気のアルゼンチンでしたが、さすがに旅客機による超低空飛行に対しては、批判的な声が圧倒的でした。しかし、パイロットの応援のおかげでアルゼンチン代表は延長戦の末にオランダを破って、初優勝を遂げることになりました。

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