パリ五輪で主軸となった藤田や細谷といった面々は、A代表に吸い上げられるだろうか(C)Getty Images 3位決定戦でエジプトを6-0で破ったモロッコが銅メダルに輝き、決勝ではスペインが延長戦の末に開催国フランスを5-3で下した…

パリ五輪で主軸となった藤田や細谷といった面々は、A代表に吸い上げられるだろうか(C)Getty Images

 3位決定戦でエジプトを6-0で破ったモロッコが銅メダルに輝き、決勝ではスペインが延長戦の末に開催国フランスを5-3で下した。

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 ベスト8で終わった日本はすでに帰国し、それぞれのクラブに戻っている。8月4日に帰国後、7日のJ1第25節に強行出場した選手も多く、すでにその目は次のステップであり最終ステップでもある、A代表へ向けられている。9月からはワールドカップ最終予選が始まるが、早速A代表に名を連ねる選手はいるだろうか。

 まず候補に挙がるのは、GK小久保玲央ブライアンだが、クラブは今夏にシント=トロイデンへ移籍したばかり。23歳だが小久保はトップカテゴリでの出場経験が乏しいので、まずはシーズンを通してクラブで存在感を示せるよう、招集は一旦見送ったほうがいいタイミングだ。

 五輪を通じて大舞台での安定感は示したが、キャッチングできるボールを弾いたり、ハイクロスにアタックせずに留まったりと、未然に防がないため、ビッグセーブの機会を自ら増やした側面もあった。ただし、その判断自体に迷いはなかったので、確信を持って割り切れる性格は大舞台向きというか、GKに求められるメンタリティーを備えていると確信した。

 あとはワールドクラスの試合を日常の経験とするべく、どれだけ総合的にレベルアップできるかだ。次こそはフェルミン・ロペスのエリア外からのシュートに、手が間に合うように。あの悔しさを糧に、今はクラブでの出場にこだわり、経験を積んでほしい。

 次に注目するのは、FW細谷真大だ。ボールを収めるプレーはあまり良くなかったが、背後を取る駆け引きと、瞬発力が以前より増した。また、守備でプレッシングに走り回りながら、マリ戦の試合終盤にドリブルで相手を置き去りにしてゴールをお膳立てするなど、無尽蔵のスタミナも圧巻の一言だった。得意ではないプレーを改善するより、自らの武器をより研ぎ澄ませている印象だ。

 ロングスプリントや連続スプリントで違いを見せる浅野拓磨の馬力と、一瞬の動き出しで相手DFを陥れる古橋亨梧の裏取り。細谷はその両方を備えたハイブリッドFWだ。ただし、アジアカップと同じように細谷を単体で招集すると、前者ばかりが際立ち、ゴールへ迫る魅力が消えてしまう。細谷を入れるなら、間のわかる相棒として藤田譲瑠チマを加えたいところだ。

 古橋もそうだったが、特長である裏取りを活かせるパッサーがいなければ、このタイプのFWは存在感が消えてしまう。逆に藤田にとっても虚を突いて背後を取るFWがいたほうが、彼のスナイパーのようなパススキルが生きるので、彼らは同時に招集したほうがチームへの順応が早まるだろう。藤田は能力がずば抜けているためか、少し狙いすぎる傾向もあり、ゲームコントロールに関しては全幅の信頼は置けない。だが、この息の合う2人がゴールを最短で射抜くプレーは質が高く、A代表にも刺激になるはず。

 最後にDF、高井幸大だ。蹴って、走って、競って、図太さもある才能の塊のような選手だ。素材はワールドクラス。スペックに欠点がないのは、現代センターバックにとっては大きな長所と言える。ただし、その能力の高さ故か、準備が悪くても間に合ったり、やられそうになっても身体の幅でどうにかしたりと、辻褄を合わせているので決定的なミスにならないが、本来はもっと良い準備ができる場面が目につく。

 昨季の川崎でも、高井が出ている試合はスコアが荒れる傾向が強く、彼の立ち位置や判断、集中力に起因するミスが多かった。今季は改善し、五輪代表でも川崎でもそうしたミスが減った印象はあるが、無くなったわけではない。

 彼がより成長するためには、辻褄を合わせられないほど強力な選手たちと日常を戦うため、欧州クラブでステップアップするのは一つの方法だ。しかし、その場合は昨季の川崎での経験のように、失点に絡みすぎて出場機会が激減する恐れもある。そこは心構えというか、一度A代表に高井を呼び、先輩センターバックたちがどんな準備、駆け引きを行っているのか、刺激を与える環境に入れたほうがいいのではないか。

 難しいポジションなので、今すぐA代表のスタメンに送り出せるとは思わない。だが、素材的には世界のセンターバックと比肩する選手。これから先、さらに能力を引き出すためには環境が何よりの名コーチだ。

[文:清水英斗]

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