(全国高校野球選手権大会、9日 南陽工2―6菰野) 九回表、1点を追加されてなお2死二塁。「裏の攻撃につながれ」。南陽工の阿部和希投手(2年)の127球目。気持ちを込めて投げ込んだ直球に相手打者のバットは空を切り、攻撃を断ち切った。ボールが…

(全国高校野球選手権大会、9日 南陽工2―6菰野)

 九回表、1点を追加されてなお2死二塁。「裏の攻撃につながれ」。南陽工の阿部和希投手(2年)の127球目。気持ちを込めて投げ込んだ直球に相手打者のバットは空を切り、攻撃を断ち切った。ボールがミットに収まった瞬間、伊藤朋晃捕手(2年)がガッツポーズを見せるほどの会心の投球だった。

 山口大会で5試合中4試合に登板し、チームを引っ張った右腕はこの日、苦しんだ。3本の二塁打を含む14安打を浴び、6点を失った。

 「球が軽くてまっすぐが全然ダメ。山口では通用したけれど、甲子園では詰まっても鋭い打球を飛ばされた。甘かった」と振り返った。

 毎回のように得点圏に走者を背負う厳しい展開だったが、気持ちは切らさずに投げ抜いた。丸山想太主将(3年)は試合中、「俺らが何とかするけえ」と2年生エースに声をかけ、鼓舞し続けたという。

 阿部投手は「自分が点を取られていたので」と打撃では4打数3安打と奮起した。七回の左前安打は一、三塁とチャンスを広げ、得点につながる一打になった。

 続く八回、チームは2対5と詰め寄り、「逆転の南陽工」を予感させる展開を見せる。九回も2死一、二塁の好機を作ったが、そこまでだった。

 力は相手が上だった。しかし、マウンド上では「弱気は最大の敵」を意識し、真っ向勝負を挑み続けた。今日の投球に悔いはない。「球速も制球も完成度を上げて戻ってくる」。阿部投手は来年に向けて誓った。(青瀬健)