決勝戦を前に失格を命じられたビネシュ。(C)Getty Images 壮絶な減量の末の“アクシデント”は波紋を呼んだ。 物議を醸し続けているのは、現地時間8月7日に行われたパリ五輪女子レスリングのフリースタイル50キロ級決勝でサラ・…

決勝戦を前に失格を命じられたビネシュ。(C)Getty Images

 壮絶な減量の末の“アクシデント”は波紋を呼んだ。

 物議を醸し続けているのは、現地時間8月7日に行われたパリ五輪女子レスリングのフリースタイル50キロ級決勝でサラ・ヒルデブラント(米国)と対戦予定だったビネシュ・フォガト(インド)の失格劇だ。

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 金メダルに向けた挑戦は順調そのものだった。1回戦で東京五輪の金メダリストであった須崎優衣から大金星を挙げたビネシュは、その後も快進撃を続け、決勝戦に進出。ヒルデブラントとの大一番を闘うのみとなっていた。

 しかし、前日の晩に2キロの体重超過が判明。散髪や採血も行った壮絶な減量に励んだが、体重は落としきれず。試合当日早朝の公式計量で100グラムだけリミットオーバーとなり、無念の失格処分が言い渡された。

 失格直後に自身のXで「私の勇気もすっかり折れてしまいました。もうこれ以上の力はありません」と現役引退を公表したビネシュ。通常体重56キロから50キロ以下を維持してきた過酷なトレーニングに耐えてきただけに、そのショックは計り知れない。

 そうした中で、「減量失敗」という結果を受け、国内外からは彼女を嘲笑うかのような反響も目立った。あくまで失格は本人と陣営の責任であるという厳しい論調である。

 失意の渦中にある当人たちへの配慮に欠ける意見とも言える。それだけに、国内のアスリートからは怒りの声が上がった。東京大会男子65キロ級で銅メダルを獲得したバジュラン・プニア氏は、インド放送局『NDTV』の取材に応じ、「ビネシュは誰にも負けていない。彼女は勝者である」と強調。そして「物事を荒らそうとする連中はレスリングや減量の何たるかを何も知らない。今、俺が怒っているそういうやつらに対してであって、メダルを失ったからじゃない」と訴えた。

 さらに「レスリングでは、1グラムの許容量さえ与えられない」と実情を語ったプニア氏は「こういうことは初めてじゃない。俺の知り合いを含めて何人ものレスラーが、減量失敗で失格になったことがある」と指摘。誹謗中傷も展開する一部のファンや関係者に苦言を呈している。

「この事件で残念なのは、俺たち、国民の娘が五輪でメダルを失ったという事実に対して、人々が嘆き、悲しんですらいないことだ。それどころか、ビネシュは笑いものにされている」

 レジェンドの怒りの声は、ビネシュを嘲笑する人々の胸にどう響くだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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