「全国高校野球選手権・1回戦、西日本短大付6-4金足農」(9日、甲子園球場) 甲子園をとりこにした風が、6年の時を経て、再び聖地に吹き荒れた。わき起こる手拍子に涙が止まらない。「金足農業がここまで応援されていると思っていなかったので、うれ…

 「全国高校野球選手権・1回戦、西日本短大付6-4金足農」(9日、甲子園球場)

 甲子園をとりこにした風が、6年の時を経て、再び聖地に吹き荒れた。わき起こる手拍子に涙が止まらない。「金足農業がここまで応援されていると思っていなかったので、うれしくて…」。吉田大輝投手の2年生の夏が、早すぎる終わりを迎えた。

 道しるべはいつも、大歓声を受けて甲子園のマウンドに立つエースの姿だった。2018年夏に同校準Vを導いたオリックス・輝星投手(23)を兄に持つ。スタンドで応援した当時11歳の少年は“カナノウ旋風”を一心に感じた。「1球1球、球場がざわめいている中で、輝星は楽しんでいるふうに見えた。本当に尊敬しています」。兄を超えるため、同校へ進学した。

 同じ背番号1を背負い、今夏秋田大会では4試合で4完投2完封。だが、甲子園のマウンドは「難しかった」。輝星も応援に駆けつけた中、7回154球の熱投も9安打5四球と苦しみ5失点。ほとんど初めて途中でマウンドを譲った。

 「兄と同じ舞台に立てたことはうれしいんですけど、自分はまだ甲子園にふさわしくない投手だと分かりました」

 6点を追う九回には、2点差まで詰め寄る猛追。球場全体から送られる拍手と、先輩たちの意地を目に焼き付けた。甲子園の土は持ち帰らない。「これからは誰にもマウンドを譲らない気持ちでやっていきたい。絶対に来年、パワーアップして戻ってきます」。涙をぬぐい、甲子園にしばしの別れを告げた。

 ◆吉田 大輝(よしだ・たいき)2007年4月23日生まれ、17歳。秋田県潟上市出身。178センチ、85キロ。右投げ右打ち。小学2年から軟式の天王ヴィクトリーズで野球を始め、天王中では同校野球部と硬式のネオグリッターズの両方に所属。金足農では1年春からベンチ入りし、秋から背番号1。50メートル走6秒6、遠投95メートル。最速146キロ。