(9日、第106回全国高校野球選手権1回戦 金足農4-6西日本短大付) 九回。2点差に迫られ、なお2死一、二塁のピンチ。一打同点の走者を背負ったマウンドで、西日本短大付のエース村上太一は笑みを浮かべた。 「自分の合言葉は『必笑(ひっしょう)…

(9日、第106回全国高校野球選手権1回戦 金足農4-6西日本短大付)

 九回。2点差に迫られ、なお2死一、二塁のピンチ。一打同点の走者を背負ったマウンドで、西日本短大付のエース村上太一は笑みを浮かべた。

 「自分の合言葉は『必笑(ひっしょう)』です。苦しい場面でも笑顔で投げきろうと思っていました」

 1ボール2ストライクと追い込んだ4球目。「今日は良かった」というカットボールで二飛に打ち取ると、右腕を突き上げて喜んだ。

 昨秋と今春の福岡県大会は、いずれも5回戦で敗れた。相手打線を抑えられず、野手から「もっと投手が頑張れ」と言われた。厳しい言葉は期待の裏返しだ。奮起し、走り込みのほか、筋力トレーニングにも必死に取り組んだ。

 球威はもちろん、制球力も向上した。この日は「(直球と)同じ腕の振りで1、2球分落ちるイメージ」というカットボールがさえた。低めに集め、八回まで被安打4、無失点に抑えた。

 「少し投げ急いだ」という九回。ピンチが続くと、金足農を応援する手拍子が球場に響いた。「応援は想像していた」と村上。前夜、チームメートと6年前の「カナノウ旋風」の映像を見て、イメージを膨らませていた。

 仲間とつかんだ2010年夏以来の1勝。村上は言う。「みんなの努力が報われた。決勝に行けるように1勝ずつ積み上げていきたい」(鷹見正之)