(9日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 新潟・新潟産大付2―1埼玉・花咲徳栄) 気がついたら、1点差を追う九回裏だった。 「冷静に、冷静に。でも、何とか打たないと」。この回先頭の花咲徳栄の主将、生田目奏(かなで)(3年)は、そう自分…

(9日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 新潟・新潟産大付2―1埼玉・花咲徳栄)

 気がついたら、1点差を追う九回裏だった。

 「冷静に、冷静に。でも、何とか打たないと」。この回先頭の花咲徳栄の主将、生田目奏(かなで)(3年)は、そう自分に言い聞かせて打席に入った。

 埼玉大会の決勝では本塁打を放つなどチームを引っ張ったが、この日はここまで無安打。六回無死一塁の好機でも、併殺に打ち取られていた。九回の打席は結局、外角の直球に手を出して中飛に。4番の石塚裕惺(3年)の前に好機を作れなかった。

 生田目は、どんな球にも対応するしなやかさが持ち味で、打撃センスは岩井隆監督をして「天才的」と言わしめるほど。昨夏の埼玉大会は2年生ながら打率6割と活躍した。

 新チームでは主将に指名され、「来年は絶対に甲子園に行く」と誓った。もともと人前で自分の意見を話すことは苦手だというが、強いチームにするために仲間に厳しい言葉もかけた。プレッシャーから調子を落とし、冬の3カ月間、石塚に主将を交代したこともあった。やっとの思いでつかんだ甲子園への切符だった。

 選手らは皆「ここまで来られたのは生田目のおかげ」と口をそろえる。投手の岡山稜(3年)は「誰より努力するし、野球の技術もトップレベル。そんな生田目だからついて行けた」。

 「甲子園の雰囲気にのまれてしまって……。ただただ、ふがいないです」。試合後、ぼうぜんとする生田目を、岩井監督は「花咲徳栄のキャプテンを背負うというのは、大変な重圧だっただろう」とねぎらった。

 卒業後は大学で野球を続けるつもりだ。苦しいことが多い1年間だったが、「ここまでついてきてくれた仲間にありがとうと伝えたい」と前を向いた。(山田みう)