(9日、全国高校野球選手権大会1回戦 新潟産大付2―1花咲徳栄) 1点を先行されている。だが、焦りはない。自分の役割は塁に出て、後続につなぐこと。新潟産大付の主将、平野翔太(3年)は五回表、そんな気持ちでこの試合3回目の打席に立った。 選球…

(9日、全国高校野球選手権大会1回戦 新潟産大付2―1花咲徳栄)

 1点を先行されている。だが、焦りはない。自分の役割は塁に出て、後続につなぐこと。新潟産大付の主将、平野翔太(3年)は五回表、そんな気持ちでこの試合3回目の打席に立った。

 選球眼には定評がある。甘い初球を中前にはじき返して一塁に出た。花咲徳栄の一塁手、横山翔也(3年)に「お願いしゃす」とにやけながら小声で言った。横山は無言だったが、少し笑っているように見えた。

 横山は三条市出身。中学時代、平野とは別のリトルシニアチームに所属していた。平野の印象は「強打者」。中学3年の秋、仲良くなった。

 花咲徳栄は第99回大会を制した強豪だ。横山はそんなチームのレギュラーの座をつかみとった。今夏の埼玉大会の準々決勝では、同点で迎えた九回裏2死満塁の場面で痛烈な当たりを好捕。チームをサヨナラ負けの危機から救った。

 そして今大会。6日にあった開会式のリハーサルの後、横山から平野に声をかけた。「お願いしゃす」。平野も「お願いしゃす」。そして「初戦で当たるとはな」と笑い合った。

 迎えた9日の試合。花咲徳栄は二回に横山の犠飛で先制した。だが、後が続かない。対して新潟産大付は六回に追いつき、七回に平野が勝ち越しの本塁を踏んだ。

 試合後の礼の後、横山と言葉を交わせなかった。でも、横山はきっと祝福の連絡をくれる、その時はこう返そうと思っているんです、と平野は試合直後の取材に語った。「ありがとう。次も勝つよ」(鈴木剛志)