<全国高校野球選手権:西日本短大付6-4金足農>◇9日◇1回戦カナノウ旋風、再現はならず-。18年全国準Vの金足農(秋田)は最終回に猛攻を見せたものの、西日本短大付(福岡)に4-6で敗れた。18年のエース、吉田輝星(現オリックス)も観戦する…

<全国高校野球選手権:西日本短大付6-4金足農>◇9日◇1回戦

カナノウ旋風、再現はならず-。18年全国準Vの金足農(秋田)は最終回に猛攻を見せたものの、西日本短大付(福岡)に4-6で敗れた。18年のエース、吉田輝星(現オリックス)も観戦する中で弟の吉田大輝投手(2年)が粘投も及ばず、涙した。初出場の新潟産大付は、17年全国優勝の花咲徳栄(埼玉)に2-1で勝ち、新潟県勢では7年ぶりの初戦突破を決めた。

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悔し涙と感涙が入り交じった。吉田は秋田大会は登板全4試合で完投したが、甲子園では154球の力投も9安打5四球3暴投、7回5失点で降板。「自分が全部の回、マウンドに立てなかったことが本当に悔しくて」。ふがいなかった。

0-6で迎えた最終回。先輩たちの思いに胸がさらに熱くなった。「先輩方が『お前を負け投手にしないからな』と声をすごいかけてくれた」。仲間が必死につなぎ、2番近藤から打者一巡の猛攻。「もしかしたら勝てるんじゃないか、ひっくり返すんじゃないか」。ベンチで何度も涙をぬぐい、声をからして祈った。

6年前のカナノウ旋風時に響き渡った巨人のチャンステーマ曲「Gフレア」が流れると、甲子園が大逆転劇への期待感に包まれた。「金足農業がここまで応援されているとは思っていなかったので、本当にうれしかったですし感動して涙が出てきました」。それでも及ばず、今夏が終わった。

11歳の夏。シャキーンポーズでも湧かせて「カナノウ旋風」の中心にいる兄の姿に憧れた。「1球1球、球場がざわめいて、味方についたり相手についたりする中で、輝星は楽しんでいる風に見えた」。兄を超えるべく金足農に入学し、1年秋から背番号は1。「先輩の代で背負わせてもらっている。自分の投球で恩返しできれば」。エースの自覚を口にし続けてきた。

だが、兄が楽しんだマウンドは「難しかった」。初回に暴投からピンチを広げて失点。本来の制球力を欠き、西日本短大付に終始攻め込まれた。「(兄には)天と地の差くらい、まだまだ届かない」。兄の偉大さを、ひしひしと感じた。

開会式で、3つ隣に並ぶ慶応(神奈川)が持っていた大優勝旗に見とれた。「先っぽのとんがっているところが金だったんですよ。それが格好いいなって」と無邪気に笑っていた。6年前にあと1歩で逃した深紅の旗は、まだ遠かった。まだ2年生。「この舞台に戻ってこなきゃいけない」。格好いい兄と旗に、手を伸ばし続ける。【浜本神威】

◆主な兄弟登板 金足農はオリックス吉田輝星(18年夏準V)の弟大輝が先発。最近の主な兄弟登板では03、06年光星学院の桑鶴康弘、優太、22~24年八戸学院光星の洗平(あらいだい)歩人、比呂らがいる。79、80年上尾の仁村徹、健司は2年連続。91、94年市川(山梨)の樋渡卓哉、勇哉はともに夏の大会で勝利がある。83年には東海大一(現東海大静岡翔洋)の杉本康徳、尚彦(双子)が、春夏ともに先発した。