「大岩(剛=監督)さんからは『もっとできる』ということは言われたので、その通りだと思いますし、もっと上に行かないといけない。恩返しをしたいなと思います」  8月2日(日本時間3日)のパリ五輪準々決勝・スペイン戦(リヨン)でイメージ通りの同点…

「大岩(剛=監督)さんからは『もっとできる』ということは言われたので、その通りだと思いますし、もっと上に行かないといけない。恩返しをしたいなと思います」

 8月2日(日本時間3日)のパリ五輪準々決勝・スペイン戦(リヨン)でイメージ通りの同点弾をVARで取り消され、さらに2つの決定機を逃したエース・細谷真大(柏)は8強止まりに終わった大舞台を糧に、新たなチャレンジをスタートさせる覚悟を口にした。

 そのターゲットはもちろんA代表定着、そして2026年北中米ワールドカップ(W杯)出場だ。それも単に参加するのではなく、W杯3大会で2ゴールをマークした偉大な先人・岡崎慎司(バサラ・マインツ監督)、2022年カタールW杯でドイツから決勝弾を奪った浅野拓磨マジョルカ)のような大仕事をすることが求められるのだ。

「フィジカルを含めて余裕はありましたし、『やれてるな』という感覚はあったので。あとはゴール前の質をもっと高める必要がある。ミドルシュートを含め、(フィニッシュは)スペインの方が上だったので、そこはもっと上にいかないといけないのかなと思います」と本人も語っていたが、決めるべきところで決め切るというのは日本サッカー界全体の永遠のテーマでもある。

「決定力というのは、個人が決めることなのか、グループとしてゴールに向かっていくことなのか…。いろいろな方法論があると思いますが、我々のグループとしてはチームとして決定力を上げることを考え、チャンスクリエイト増加を求めてやってきた。それでもレベルの高い相手に得点できなかったという事実を受け止めて、何が足りないのかをみんなが発信し、意見を出していくことが大事だと考えています」と大岩監督も模索している様子だった。点取り屋の細谷には答えを見出す急先鋒になってほしいのだ。

■アタッカーがA代表に呼ばれるために

 斉藤光毅(ロンメル)や三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)、平河悠(ブリストル)らアタッカー陣も所属先でゴールという結果を残し、課題解決に貢献してほしい。彼らが頭抜けた数字を残せば、森保一監督も放っておくはずがない。東京五輪世代中心の今の日本代表アタッカー陣に割り込んでいくためにも、彼らにはとにかくクラブでの活躍に強くこだわってほしい。それは中盤の藤田譲瑠チマ山本理仁(ともにシントトロイデン)にしても同様だ。

 守備陣に目を向けても、”国防ブライアン”の異名で一世を風靡した小久保玲央ブライアン(シントトロイデン)を筆頭に、近未来のA代表昇格の可能性があると言われる高井幸大(川崎)、関根大輝(柏)らには継続的な実績とパフォーマンスを示してもらう必要がある。

 特に高井に関して言えば、Jリーグでプレーしている時と代表に行った時では安定感が全く違う。メンタル面の問題なのか、より高いレベルの外国人と対峙すると潜在能力が引き出されるのかは分からないが、川崎に戻ってJリーグを戦う以上、谷口彰悟(シントトロイデン)のような統率力と牽引力を発揮してもらわなければいけない。

■9月のA代表では

 この先、A代表定着を目指そうと思うなら、アカデミーの先輩・板倉滉(ボルシアMG)ら欧州組DF陣を越えていくことが求められる。川崎U-18時代の長橋康弘監督は「ポテンシャル的には板倉より上」と評価しているようだが、発信力や言語化能力はまだまだ足りない。高井自身も課題を自覚して取り組んでもらいたい。

 その点、現役大学生の関根はコミュニケーション能力に長けている。性格的にもオープンで、年齢的に上のグループや外国人の中にも入っていけそうだ。

「自分ももっと上のレベルに行きたい」と関根は前向きにコメントしていたが、一気に抜け出していくためには近い将来の海外移籍はマストだろう。そこで実績を残して初めて菅原由勢(AZ)ら年長者と堂々と競える状況になる。左サイドバック(SB)の大畑歩夢(浦和)も「世界に行かないと追いつけないという危機感はある」と本音を吐露していただけに、パリ世代の海外移籍の波は加速しそう。その中からより多くの人材がA代表に上り詰め、日本代表のレベルアップに貢献してくれれば、大岩監督も報われるのではないか。

 まずは9月からスタートする2026年W杯アジア最終予選メンバーの行方をしっかりと見極めたいものである。

(取材・文/元川悦子)

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