8月7日のサガン鳥栖戦を3-0で勝利し、勝ち点47の2位に浮上した鹿島アントラーズ。ランコ・ポポヴィッチ監督が「全員がやるべきことをしっかりやり切ったという意味で言えば、今シーズンで一番の試合だったのかもしれない」と手放しで喜んだ通り、濃…

 8月7日のサガン鳥栖戦を3-0で勝利し、勝ち点47の2位に浮上した鹿島アントラーズランコ・ポポヴィッチ監督が「全員がやるべきことをしっかりやり切ったという意味で言えば、今シーズンで一番の試合だったのかもしれない」と手放しで喜んだ通り、濃野公人、仲間隼斗安西幸輝という幅広いポジションの選手がゴールを奪い、課題だった守備も無失点で乗り切ったのだから、大きな手ごたえをつかんだはずだ。

 とりわけ復調が目立ったのが、柴崎岳三竿健斗の新ボランチコンビ。今回は知念慶が出場停止で、彼らがスタートから出場したが、「すでに佐野海舟(マインツ)が移籍し、今季前半戦デュエル王の知念もいなくなると、守備強度が下がるのではないか」といった懸念要素もあったのではないか。

 確かにポゼッションと丁寧な組み立てを重視する鳥栖に序盤はボールを持たれた時間帯もあった。が、指揮官が「もしかしたら柴崎選手は彼のキャリアの中で今日ほどボールを多く奪った試合はなかったかもしれない。重要な場面でボール奪取を見せてくれた」と絶賛したように、柴崎は前半18分の濃野の先制弾のシーンでも即時奪回から好アシストを披露。チャンスをお膳立てするパスや思い切りのいいミドルシュートも放った。

■「衝撃の連続です」

「(岳君は)信じたことを全てやってくれるというか、『ボール来そうだな』ってところに出してくれるし、『この球際で勝ってほしい』っていうのを勝って、僕にボールこぼしてくれた。『頼む』っていうところで全部、思い通りにしてくれるんで、衝撃の連続です。そういう人と一緒にやれてるのはいい財産になっているのかなと思います」と濃野も柴崎の本領発揮に目を見張ったが、キャプテン・選手会長・10番が復活しつつあるのは、間違いなく朗報だ。

 7月20日のFC東京戦から古巣復帰した三竿も24日のブライトン戦では動きにキレがなく、コンディション的に今1つという印象だったが、この日は仲間の2点目につながるパス出しなど攻撃に関与する回数も増加。守りの部分でも濃野の大きなスペースをカバーするなど、彼らしい頭脳的な動きが光った。

「ブライトン戦よりも横並びになる時間はそんなになかったんじゃないかなと。お互いを見ながら、どっちかがタテに出て、どっちかがへそを押さえるっていうのができていた。後半ちょっとタテ気味になって、守備の時には名古(新太郎)と岳君で相手の2ボランチを抑えにいくという形に中で喋って変えてみたけど、それも結構うまくいっや。そうやって臨機応変に対応できたところが今日はよかった」と三竿本人も前向きに言う。

■新たな成長の原動力に

 三竿にしてみれば、東京ヴェルディから移籍していた2016年時点では、柴崎と小笠原満男(アカデミー・テクニカル・アドバイザーがボランチのお手本だったという。

「僕が鹿島1年目で試合に出れてない時に満男さんと岳君を見てイメージを膨らませていた。あれから7年8年経ってから一緒に出れて、今は嬉しさだったり、楽しさの方が強いです」とやりがいを感じつつ、プレーできている様子。それも三竿にとっては新たな成長の原動力になるはずだ。

 11日の次節・ジュビロ磐田戦からは知念も復帰するが、今後は彼ら3人をベースに対戦相手や疲労・日程などを考慮しながらコンビを変えられるようになりそうだ。加えてリスタートのキッカーとしても力を発揮できる樋口雄太もいる。彼らを臨機応変に使い分けられれば、戦い方のバリエーションも広がるはずだ。

 一部報道によれば、手薄なFWに関しては、田川亨介(ハーツ)の加入が有力視されている。新戦力が入ってすぐにフィットするかどうかは未知数だが、中盤に関しては複数の組み合わせを作れるメドがついたと言っていい。ここから終盤戦にかけての鹿島のさらなる飛躍が楽しみだ。

(取材・文/元川悦子)

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