世界各国のアスリートたちが競い合う五輪。至高の舞台では誹謗中傷被害を深刻化させている。(C)Getty Images 日本勢のメダルラッシュもあり、大きな活況を呈しているパリ五輪。選手たちの活躍が連日のようにトピックとなる中、SNS…

世界各国のアスリートたちが競い合う五輪。至高の舞台では誹謗中傷被害を深刻化させている。(C)Getty Images

 日本勢のメダルラッシュもあり、大きな活況を呈しているパリ五輪。選手たちの活躍が連日のようにトピックとなる中、SNSを中心とした誹謗中傷被害が物議を醸し、小さくない問題となっている。

 無論、アスリートたちを後押しする声もある。しかし、一部で誹謗中傷が過剰な域に達しているのも事実だ。今大会では被害がエスカレートしている感がある。

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 柔道男子60キロ級では、日本代表の永山竜樹(世界ランク6位)から「待て」がかかったにも関わらず、絞め続けて一本勝ちを収めたスペイン代表のフランシスコ・ガルリゴス(同4位)に批判が殺到。永山が「お互い必死に戦った結果なので、ガリゴス選手への誹謗中傷などは控えて頂きたいです。審判の方も判断の難しい状況だったと思います」(原文ママ)と自身のSNSで訴える異例の展開となった。

 また、バレーボール男子日本代表の小野寺太志は、差別的発言まで寄せられるほど事態が深刻化している。

 小野寺は、現地時間8月5日に行われたイタリア代表戦の第5セット、15-14と日本がマッチポイントを迎えた場面で痛恨のサーブミス。これでデュースに持ち込まれたチームは一気に逆転を許した。

 確かに手痛いミスではあった。しかし、差別的な批判を受けるいわれはない。小野寺は自身のSNSで「一部の方からの誹謗中傷もコメントやDMに届いていますが、僕があの場面でミスをしてしまったのも事実ですし、そのような意見があるのも仕方のない事だと思います」と悲痛な思いを明かしていた。

 どれだけ問題が起きようとも、収まる気配のない誹謗中傷。その被害の重みを“当事者”となった選手たちは切実に訴える。今大会で性別適格騒動の渦中に置かれた女子ボクシング66キロ級のイマネ・ケリフ(アルジェリア)は、『SNTV』で、ネット上で「元男性」と批判される経験から、その恐ろしさを語る。

「私は世界中の人々に対し、オリンピックの原則とオリンピック憲章を守り、すべての選手に対するいじめをやめてほしいとメッセージを送ります。なぜなら、いじめには甚大な影響があるからです。いじめは人々を破壊し、考えや精神、そして人の心を殺します。人々を分裂させる可能性があり、そのためには、私は人々にいじめを控えるよう求めます」

 あらゆるスポーツは人間が行うものであり、ミスは大なり小なり付き物だ。ましてや五輪のような重圧のかかる局面では、犯す可能性は大きくなるのは当然だ。そんな極限状態にいる選手たちの人格や尊厳を否定するのは、単なる「暴力」でしかない。

 その投稿が、その言葉が相手を傷つけるものではないか――。簡単に利用でき、選手たちとの距離も近いからこそ、SNSでのメッセージは一度考える必要がある。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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