大論争の渦中にあるケリフ。彼女が「受けた」とされるテストの実情が明かされた。(C)Getty Images パリ五輪のボクシングで一人のアスリートの快進撃が注目を集めている。女子66キロ級で、決勝進出を決めたイマネ・ケリフ(アルジェ…

大論争の渦中にあるケリフ。彼女が「受けた」とされるテストの実情が明かされた。(C)Getty Images

 パリ五輪のボクシングで一人のアスリートの快進撃が注目を集めている。女子66キロ級で、決勝進出を決めたイマネ・ケリフ(アルジェリア)だ。

 怒涛の快進撃でファイナリストとなった25歳だが、今なお、世界的な論争の渦中にある。

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 ケリフは、昨年に国際ボクシング連盟(IBA)が世界選手権前に実施した性別適格検査で「XY染色体を持っている」と判明。パリ五輪57キロ級に出場しているリン・ユーチン(台湾)と共にIBAから女子選手として出場権を剥奪された経緯があった。

 そのため、今回のパリ五輪出場の際には一部のファンや識者から批判が殺到。米大統領選に出馬しているドナルド・トランプ氏も言及をするなど、国際的な事態に発展していた。

 もっとも、IBAを統括団体としての承認から取り消している国際オリンピック連盟(IOC)は、ケリフとリン・ユーチンの女性としての競技参加が「問題ない」と指摘。“御大”であるトーマス・バッハ会長も「我々の決定は科学的な根拠に基づいたものである」と正式に断言していた。

 もはや問題はIBAとIOCのドロ沼の争いに発展していきそうな様相ではある。そうした中で、現役女子ボクサーからもケリフを後押しする声が上がっている。ケリフとの対戦経験を持つフランス人戦士のエミリー・ソビンコは、フランスの日刊紙『Le Figaro』で「イマネが女性であること、女性として生まれたことに疑いの余地はない」指摘。そして、IBAが実施する“検査”に対する仰天の体験談を語っている。

「計量中に相手チームのコーチやマッチコミッショナーからの苦情や疑問があったりする場合には、急遽テストを受けないといけない場合がある。私は2度もそれを経験したことがありますが、それは『女性らしさを調べるテスト』と呼んでもいいものでした。少なくとも私が受けた検査は血液検査ではない。私は担当医にズボンを下ろせと言われて、中をチェックされたんです。初めては、正直言ってあまり気分が良いものじゃなかった」

 事実であれば、愕然とする検査内容だ。さらに「ホルモンの問題に対して連盟同士の調和が欠如している」と指摘するソビンコは「責任を取るのは当局であるべき。でも、今は誰も問題を明確にしたがらない。そうなっているからイマネは憎しみの波にさらされている」と断言。ケリフが連盟間の争いの被害を受けていると語った。

 現地時間8月9日に行われる66キロ級決勝で、世界選手権の同級覇者である楊柳(中国)と対戦するケリフ。ここで彼女が勝利し、金メダルを手にした時、世界はいかなる反応を示すだろうか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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