8月1~9日、岩手県盛岡市のきたぎんボールパークで「いわて盛岡サマーベースボールリーグ」が開催された。東北地区、関東地区の大学硬式野球部、社会人野球チームによる交流戦で、昨年に続き2度目の開催。今年は東北大学、日本ウェルネススポーツ大学茨…

 8月1~9日、岩手県盛岡市のきたぎんボールパークで「いわて盛岡サマーベースボールリーグ」が開催された。東北地区、関東地区の大学硬式野球部、社会人野球チームによる交流戦で、昨年に続き2度目の開催。今年は東北大学、日本ウェルネススポーツ大学茨城キャンパスなどが加わり、昨年より3チーム多い16チームが参加した。

1年目の反響受け参加チーム数、試合数が増加

 きたぎんボールパークは昨年4月に開場した。老朽化の進んでいた岩手県営野球場、盛岡市営野球場の後継施設として誕生した球場で、プロ野球や大学野球、高校野球などの試合会場となっている。また試合のない日も施設の一部をジョギングコースとして利用できるなど、地域に根ざした運用を行っており、岩手の“新聖地”として注目を集めている。

きたぎんボールパークを舞台に熱戦が繰り広げられた

 いわて盛岡サマーベースボールリーグは、岩手の野球振興、大学野球のPR、次世代育成などを目的として昨年からスタート。球場の運営、管理を行う盛岡南ボールパーク株式会社の構成企業の一つである株式会社フクシ・エンタープライズ(東京都)の社員や地元の大学生らで構成する実行委員会が中心となって、チーム間・学生間の交流の機会を創出している。

 今年は新たに参加を希望するチームが現れ、「試合数を増やしてほしい」と希望する声も多数寄せられたことから、試合数が昨年の20試合から27試合まで増加。午後6時開始のナイターゲームも設けた。

地元のバトンチーム「Rêve BT.I」による演技

 期間中はきたぎんボールパーク公式アンバサダー・上原浩治さんによる野球教室や東京大学硬式野球部員による「文武両道講座」といったイベントも開催。グラウンド開放やフリーマーケット、地元バトンチームの演技披露も、集客や文化交流を目的に組み込んだ。

地元・盛岡を愛する花巻東元主将が“凱旋”

 会場で販売されたパンフレットには、岩手ゆかりの選手を紹介するページがあり、各選手の顔写真や出身高校、岩手での思い出などが掲載された。

 茨城県の硬式野球クラブチーム「Again Baseball Club」の菅原颯太主将は“凱旋”した選手の一人。盛岡市出身で、花巻東では主将を務めた2018年に春夏連続の甲子園出場を果たしている。

 取材日の8月3日は東北福祉大学戦に「4番・捕手」でスタメン出場。3打数無安打に終わり、守っても大量失点を喫し0-11で敗れたが、「球審の方が高校3年夏の県大会決勝の試合を担当してくれていた審判だったこともあって、『帰ってきたな』という感じがありました」と久々の地元での試合を懐かしんだ。

スタメンマスクをかぶった菅原

 幼少期に菊池雄星投手(ヒューストン・アストロズ)らに憧れて進学した花巻東で捕手や三塁手としてプレーしたのち、同志社大学に進学。大学でも4年間硬式野球をやり切り、東京で就職して一度は競技を引退したが、誘いを受けて昨年の夏頃からAgain Baseball Clubで再開した。Again Baseball Clubは2021年創部で、「硬式野球をもう一度」をテーマに掲げているチーム。中には野球をするのが小学生以来という選手も所属しているという。

 菅原はいわて盛岡サマーベースボールリーグの存在をSNSで知り、高校の後輩である盛岡大学の芳賀勝コーチを通じて今年から参加を申し出た。普段の全体練習は土曜日のみで、練習試合は基本的に関東で行っているため、東北で試合をするのは貴重な機会だった。

Again Baseball Clubには会社員、公務員、トレーナーなどさまざまな職業の選手が所属している

 母校・花巻東の動向は逐一チェックしており、「盛岡が好きです」と声を弾ませる菅原。「今は純粋に野球を楽しめている。クラブチームなので、勝ちを求めつつ緩くやるのか厳しくやるのかを考えたりと、難しい部分はあるんですけど、できる限りはキャプテンとして、プレーヤーとして活躍したい。そしてゆくゆくは岩手の野球に携わりたい」と将来を思い描いていた。

開催2年目で明確になってきた利点と課題

 Again Baseball Club戦の6回に代打で登場し適時打を放った東北福祉大・後藤叶翔捕手(2年)は、一関学院3年時の夏に甲子園に出場した。甲子園では4番に座り、2試合で9打数6安打4打点と活躍。大学ではここまでリーグ戦未出場ながら、攻守にわたって期待値の高い選手だ。

 この日はベンチスタートも、ワンチャンスをものにした。きたぎんボールパークは自身が大学に進学した後に開場したため、同球場のグラウンドに立つのは初めて。「1学年下の代から使っている球場で、『いつかここでやってみたい』と思っていた。今日も試合に出たいなという気持ちでずっとベンチにいたので、打席に立たせてもらって、ヒットが打ててよかったです」と白い歯をこぼした。

代打で登場し適時打を放つ後藤

 岩手の高校野球を盛り上げた選手の現在地を知れるのも魅力の一つ。また後藤が「普段対戦しないチームと試合をさせてもらえるのはとてもいい機会になっていると思う」と話すように、実戦の場を求める選手にとっては有意義な時間と言えるだろう。

 一方、実行委員会は課題として「集客と資金繰り」を挙げる。実際、取材日も夏休み中の土曜日にもかかわらず空席が目立っていた印象。担当者は「集客については、学童野球チームの招待やメディアに取り上げていただく機会を増やすなど、広報面での工夫が必要。資金繰りについては協賛営業の強化、個人協賛の増加に向けた取り組みが必要だと考えている。いずれもイベントの価値を高めることが必要不可欠」と話す。盛岡の一大イベントとして今後どんな発展を遂げるのか、注目だ。

(取材・文・写真 川浪康太郎)