(7日、第106回全国高校野球選手権1回戦 健大高崎1-0英明) 四回表。1死満塁のピンチで、石垣元気は同じ2年の下重賢慎からマウンドを引き継いだ。150キロ台の速球を連発する気迫の投球。一塁ゴロ併殺でピンチを切り抜けると、右拳を握った。 …

(7日、第106回全国高校野球選手権1回戦 健大高崎1-0英明)

 四回表。1死満塁のピンチで、石垣元気は同じ2年の下重賢慎からマウンドを引き継いだ。150キロ台の速球を連発する気迫の投球。一塁ゴロ併殺でピンチを切り抜けると、右拳を握った。

 今春の選抜大会では、左腕の佐藤龍月とともに全5試合に登板してチームを優勝に導いた。「2人で絶対に春夏連覇しよう」と誓い合い、夏の群馬大会でも奮闘。9年ぶりの夏の甲子園出場に貢献した。

 その佐藤が左ひじを負傷した。7月30日、けがの診断を受けて寮に戻った佐藤に、「俺の分まで頼んだぞ」と思いを託された。佐藤の打撃用手袋とひじの防具を、お守り代わりに甲子園に持ち込んだ。

 青柳博文監督に背番号1を渡された時は、「自分でいいのかな」と口にした石垣。佐藤と競い合ってエースの座をつかみたかった気持ちもないではないが、試合が近付くにつれ、「投げるからには1点も取らせない」との思いは強くなった。この日は自己最速153キロの直球に変化球を織り交ぜて相手打線に安打を許さず、青柳監督を「球も走っていたし、丁寧に投げたし、本当に良かった」とうならせた。捕手としてリードした箱山遥人主将(3年)は「夏の群馬大会を含めて一番いい投球をしていたんじゃないか」とたたえた。

 試合後、石垣は「佐藤が出られない分、自分が全試合を投げるつもりで、これからも戦っていきたい」。エースの自覚をにじませた。(中沢絢乃)