(第106回全国高校野球選手権大会1回戦 滋賀学園10―6佐賀・有田工) やっぱり、この背番号がしっくりくる――。2番手で登板した滋賀学園の背番号「10」、高橋俠聖(きょうせい)が学校の選手権初勝利を呼び込んだ。 2点リードの四回、先発し…

 (第106回全国高校野球選手権大会1回戦 滋賀学園10―6佐賀・有田工)

 やっぱり、この背番号がしっくりくる――。2番手で登板した滋賀学園の背番号「10」、高橋俠聖(きょうせい)が学校の選手権初勝利を呼び込んだ。

 2点リードの四回、先発したエース・脇本燿士(てると)が3点を失い逆転された。高橋俠はなお2死一、三塁で、マウンドに立った。

 暴投で二、三塁とピンチを広げたが、変化球を低めに集めてカットボールで空振り三振に。「あそこを抑えたことで、チームを勢いに乗せられたと思う」

 五~七回は走者を1人しか出さず、八回の勝ち越しへとつながるいい流れをつくった。

 実はこの夏、最初は背番号「1」を託されていた。春の県大会決勝で、強豪・近江を打たせて取り完封。周囲は夏の滋賀大会でも好投を期待したが、それに応えようと気負うあまり、2試合に登板して7与四死球。最大の長所である低めへの制球力を発揮できなかった。

 甲子園に合わせ、好投を続けた脇本と背番号を入れ替える形になった。でも悔しさはない。同じ投手として、野球に真摯(しんし)に取り組む脇本を心から尊敬しているからだ。

 「エースの脇本を中心にして、僕らがサポートするんだと思っている。滋賀大会は力以上のことをしようとして全然だめだったけど、今日はしっかり役割を果たせた」

 5回余りを投げ、与えた四球は一つだけ。エースナンバーの重圧から解放された左腕が、本来の姿を取り戻した。(松沢憲司)