(21日、第106回全国高校野球選手権愛知大会4回戦 東郷4―3長久手) 球場の空気が張り詰めるなか、試合の幕切れは突然訪れた。同点で迎えた延長十回1死満塁、長久手のエース社本琢真選手(3年)が投じた148球目は東郷の打者の背中に当たった…

 (21日、第106回全国高校野球選手権愛知大会4回戦 東郷4―3長久手)

 球場の空気が張り詰めるなか、試合の幕切れは突然訪れた。同点で迎えた延長十回1死満塁、長久手のエース社本琢真選手(3年)が投じた148球目は東郷の打者の背中に当たった。押し出しの死球で敗れた。

 この日、チームの目標である38年ぶりのベスト16をかけて臨んだ。「出られない選手のためにも」と社本選手はここまでの3試合を一人で投げ抜いてきた。だが、あと一歩及ばなかった。

 社本選手は硬式野球クラブ出身で、高校1年の夏からマウンドに立った。当時は守備のエラーにいら立ち、仲間に強く言いすぎることもあった。

 しかし、昨夏の大会で2年生の自分が投げ負け、先輩の引退を目の当たりにして、自分だけで野球をしているのではないと考えを改めた。チームプレーを意識し、今では苦しむチームメートへの声かけを心がけていた。「あいつがいなくてはチームが成り立たない」と山口浩人監督に言わしめるほどまでに成長した。

 「野球は一人ではできない、仲間がいてこそのスポーツだと思う。いままで一緒にやってきた仲間に感謝したい」と語った社本選手。試合終了後、マウンドで崩れ落ちた社本選手のそばに駆け寄り抱きかかえたのは、他でもないチームメートたちだった。(米田怜央)