<パリオリンピック(五輪):体操>◇5日◇種目別決勝◇ベルシー・アリーナ【パリ5日=阿部健吾】体操の種目別決勝がベルシー・アリーナで行われ、男子で個人総合、団体総合を制した岡慎之助(20=徳洲会)が鉄棒で金メダルを獲得し、72年ミュンヘン大…

<パリオリンピック(五輪):体操>◇5日◇種目別決勝◇ベルシー・アリーナ

【パリ5日=阿部健吾】体操の種目別決勝がベルシー・アリーナで行われ、男子で個人総合、団体総合を制した岡慎之助(20=徳洲会)が鉄棒で金メダルを獲得し、72年ミュンヘン大会の加藤沢男以来52年ぶりのの3冠を達成した。平行棒では銅メダル。1大会4つ以上のメダルは、84年ロサンゼルス大会の具志堅幸司(5個)以来40年ぶりとなった。

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バーをつかめるだけで幸せだった。男子種目の最後を締めくくる鉄棒。岡はにこやかに時間を過ごしていた。緊張感は感じさせない。鉄棒をつかんでスイングを始めると、G難度の離れ技「カッシーナ」を決め、車輪を大きく回していく。倒立姿勢も美しい。最後の降り技をピタリと止めると、両腕を突き上げた。今大会18演技目を通しきると、後続にミスが続き、3個目の金メダルに届いた。

「ミスなくやりきれたことが金メダルにつながった」

バーを握れているだけで幸せだ。高校時代は手首などの成長痛に悩まされた。「左手で鍵を閉める事もできなかった」と高2の半年間は特に苦しんだ。鉄棒の装具もまともに付けられないほど。「めちゃくちゃ痛かったんで」と振り返る制約の日々だった。15歳で世界ジュニア王者となりながら、一気に世界舞台に駆け上がれない。そんなもどかしい日々を耐えてきた。

鉄棒の前に行われた平行棒では、もう1つの幸せも感じた。中国の鄒敬園との勝負。東京五輪に続き、この日も世界最高峰の美しさでライバルたちを圧倒する姿を目の当たりにした。自身は15・300点で銅メダル。「さばき方が好き。あそこが理想」とする存在と並んだ表彰台の経験も、今後の成長の糧になる。

個人総合は、日本勢で12年ロンドン五輪から4大会連続、6人目の王者となった。そしてスペシャリストがそろう種目別でも存在感を見せつけた。「もっと強くなって(内村)航平さんがやってきたように、常に勝ち続けられる選手になりたい」。「日本の宝」と呼ばれた青年は「世界の宝」となり、まだまだ体操を極めていく。