カリブ海に浮かぶ人口約18万人の島国、セントルシアに五輪初のメダルをもたらしたのは23歳のスプリンターだった。 陸上女子100メートル決勝。世界選手権覇者らが並ぶ中、五輪初出場のジュリアン・アルフレッドは冷静だった。「自分を信じ、コーチを…

 カリブ海に浮かぶ人口約18万人の島国、セントルシアに五輪初のメダルをもたらしたのは23歳のスプリンターだった。

 陸上女子100メートル決勝。世界選手権覇者らが並ぶ中、五輪初出場のジュリアン・アルフレッドは冷静だった。「自分を信じ、コーチを信じ、集中する」。10秒72で金メダルに輝いた。「小さな国の出身、どんな環境で育っても成功する。子どもたちにそう伝えたい」

 幼いころは裕福ではなく、裸足で走り回る日々だった。陸上大会で結果を残し始めた矢先、12歳で父を亡くした。競技をやめようと考えたこともあった。

 14歳で陸上大国ジャマイカに移住。憧れたのは同国出身の男子100メートル世界記録保持者、ウサイン・ボルト。「いつか彼のようになりたい」。この日の朝にもボルトのレース映像を見て気持ちを高めた。

 母国の国旗を身にまとった姿で、天国の父に今日の結果を報告した。「この金メダルが新しい競技場の建設などセントルシアのスポーツの発展につながることを願っています」(辻隆徳)