パリ五輪フェンシング男子エペ団体で銀メダルを獲得した日本チームの最年長で、精神的支柱となった見延和靖(37)が行きつけにしている地元・福井県鯖江市の「九龍飯店」の創業者・小野留美子さん(66)が3日、見延にねぎらいの言葉を贈った。 小野さ…

 パリ五輪フェンシング男子エペ団体で銀メダルを獲得した日本チームの最年長で、精神的支柱となった見延和靖(37)が行きつけにしている地元・福井県鯖江市の「九龍飯店」の創業者・小野留美子さん(66)が3日、見延にねぎらいの言葉を贈った。

 小野さんは、息子で現オーナーシェフの奨平さん(37)らと自宅観戦。「決勝はいい試合。銀メダルおめでとうってみんなで大喜びでした」。見延は準々決勝で途中交代し、決勝の舞台に立つことはなかったが「全然大丈夫。自分のことよりチームやフェンシング界のことを考えている人だし、あの子がいるからこそチームがまとまったはずですから」と思いをはせた。

 見延は武生商高時代に週2日、閉店間際に母親と来店。酸味の利いたスープに、たけのこ、豚肉などを卵でとじたあんかけがのっている同店の看板メニュー「九龍めん」を毎回頼んでいたという。「注文を待つ間、机の上にベタ~ッと顔を伏せていて。塾帰りなのかなとか思ってましたが、あとで練習帰りでヘトヘトだったと知りました」と小野さん。当時はちょっと気にかかる少年というイメージだった。

 だが、見延が法大進学後、小野さんの兄夫婦が経営していた東京・市ケ谷にあった同店名の「九龍飯店」(現在は閉店)を来訪。「そこで九龍めんを食べた瞬間に『鯖江のお店と関係あるんですか』って聞いたそうで、兄から連絡が来たんです。『いつも九龍めんを食べてた子ね』ってすぐ分かりました」

 以降、本人との交流がスタート。見延は帰省の度どころか、実家に寄らず来店のためだけに福井に帰ることもあった。いつも必ず頼むのは、やはり九龍めん。小野さんは「高校時代につらい練習のあとにいつも食べていたものですからね。必死だったあの頃を思い返しているのでは」と話す。パリ五輪直前も、家族だけの壮行会を同店で開き、九龍めんを堪能して現地へ旅立った。

 見延と同年齢で仲が良い奨平さんは競技終了後、ラインで「メダルをまた見せてもらうのが楽しみ」とメッセージを送ったという。東京五輪の金に続く、パリでの銀。2大会連続メダルの原動力になったのは、まぎれもなく故郷の味だった。(樋口 智城)