◆パリ五輪 第6日 ▽体操男子 個人総合決勝(31日、ベルシー・アリーナ) 橋本大輝は31日の体操男子個人総合決勝で、21年東京五輪続く連覇はならず、6位だった。橋本と同学年で2016年全中の個人総合を制し、市船橋高、順大ではライバル、仲間…

◆パリ五輪 第6日 ▽体操男子 個人総合決勝(31日、ベルシー・アリーナ)

 橋本大輝は31日の体操男子個人総合決勝で、21年東京五輪続く連覇はならず、6位だった。橋本と同学年で2016年全中の個人総合を制し、市船橋高、順大ではライバル、仲間、友人として共に日本一に輝くなど切磋琢磨してきた安達太一さん(22)が、スポーツ報知にねぎらいの手記を寄せた。

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 「橋本大輝」の名が体操界に知れ渡ったのは、市船橋高に入ってからだったと記憶しています。同じ千葉県で体操をしていたので、小中の頃から存在は知っていましたが、決してトップに来るような選手ではなかった。でも、高校からチームメートになり、一緒に練習し、そこで初めてとんでもない能力を秘めていることに気付きました。

 入学当初から大輝は、同世代ではあまりやっている選手がいないような高難度の技に次々と挑戦していました。例えば跳馬のロペス、鉄棒のコバチなど。一般的に大学生くらいで習得する技を高1でいとも簡単にできていました。2段階くらいすっ飛ばして、すぐできてしまう。とにかく驚きました。「こんなすごい選手が同級生にいる」と。

 大輝は常に世界を見ていました。高校生ですでに、日本で一番ではなく「世界で一番を取る」という熱意を持ち「高校生で普通は目指さないよ」と言いたくなるレベルの構成を考えていました。「(世界大会の)表彰台に上がる選手を超えるためにはどうすればいいか?」と話し、大輝から出てくる選手は世界選手権や五輪のメダリストばかり。今思うと、見ている景色が明らかに違っていました。

 金メダリストになった東京五輪後、一時期少し「大輝らしくないな」と感じることがありました。とにかく技の難易度を上げることにこだわり「1日一つ、挑戦するだけでもすごい」というようなハイレベルな技を練習で何個も詰め込んで。少し、近づきがたいようなオーラもありました。本人は気付いてなかったと思うのですが、僕から見ると大輝の大事な部分がなくなっているように感じました。でも当時、僕からは声はかけませんでした。今はもう、いつもの大輝がいます。

 本当に大輝の体操は「完成形」だと思います。こういう選手はこの先、出てこない可能性もあるんじゃないかなと思うくらいです。力強さ、日本が誇る美しさ、全てを兼ね備えている。ちょっと語彙力がなくなるほどすごい。そして世界一、貪欲でもある選手です。