「広島2-1DeNA」(31日、マツダスタジアム) 広島・床田寛樹投手(29)が7回8安打1失点でリーグ最速の10勝目を手にした。試合前に86年に監督としてチームを優勝に導いた阿南準郎(本名・潤一)さんの訃報が届いた。負けられない一戦での…

 「広島2-1DeNA」(31日、マツダスタジアム)

 広島・床田寛樹投手(29)が7回8安打1失点でリーグ最速の10勝目を手にした。試合前に86年に監督としてチームを優勝に導いた阿南準郎(本名・潤一)さんの訃報が届いた。負けられない一戦での勝利に新井貴浩監督(47)も「ほっとしている」と胸をなで下ろした。チームは2連勝で首位・巨人まで1ゲーム差に接近。奪首は目の前だ。

 1点差の勝利に浸るように仲間たちとハイタッチを交わした。喪章を着用しての一戦で床田が粘投。リーグ最速で10勝に到達し、自身2年連続の2桁勝利を決めた。

 「安打は結構打たれましたけど、回の先頭をしっかり取れたのでそれが良かったと思います」

 走者を背負わなかったのは四回のみ。「とりあえず序盤を何とかと思って、いろんな球種を使いながら」と緩急自在の投球であと1本を許さなかった。最高気温は33度。暑さにも負けることなく腕を振り、七回まで投げきった。「ちょっとこの夏いけるんじゃないかと。きょう体がつらなかったのは自分の中でも大きい」と厳しい条件下での好投に、手応えを得た。

 試合前に訃報が届いた。86年に監督としてチームを優勝に導いたOBの阿南準郎さんが30日、86歳でこの世を去った。哀悼の意を込め、試合前には黙とう。ユニホームの袖には喪章を着け試合に挑んだ。新井監督は「自分も若い頃にお世話になった阿南さん。ジェントルマンで優しい方だった。特別な日に勝ててほっとしています」と故人にささげる1勝をかみしめた。

 負けられない一戦で力投を見せた床田。2年連続での2桁勝利は球団左腕としては18、19年に同記録をマークした“KJ”ことクリス・ジョンソン以来だ。16年には外国人投手として史上2人目の沢村賞を獲得するなど、16~18年の3連覇に大きく貢献したレジェンド。床田は17年からの4年間ともにプレーした。

 「こういう投手になりたいとずっと見ていた。フォームのまねもしてました」とキャリアの前半を積み重ねた。今も「まだまだKJの代わりにはなれないですけど、いずれはなれるように頑張りたい」と憧れる。この日、同氏が4年ぶりに来広し、試合前にメモリアルピッチセレモニーを行う偶然も重なった。その憧れに一歩近づいた夜となった。

 カープの投手でリーグ10勝一番乗りを達成したのは18年の大瀬良以来、球団8人目(9度目)。左腕では初となった。「変わらずに試合をつくっていければおのずと勝ち星も増えてくる。なんとか粘り強く投げられればいい」と先を見据えた床田。鯉が誇る“左のエース”はまだまだ白星を積み上げていく。