<パリオリンピック(五輪):柔道>◇7月31日(日本時間8月1日)◇男子90キロ級◇決勝◇シャンドマルス・アリーナ【パリ=木下淳】「令和の三四郎」こと村尾三四郎(23=JESグループ)が、初出場で銀メダルを獲得した。決勝で前回21年東京五輪…

<パリオリンピック(五輪):柔道>◇7月31日(日本時間8月1日)◇男子90キロ級◇決勝◇シャンドマルス・アリーナ

【パリ=木下淳】「令和の三四郎」こと村尾三四郎(23=JESグループ)が、初出場で銀メダルを獲得した。決勝で前回21年東京五輪の王者ラシャ・ベカウリ(24=ジョージア)に敗れた。同じ2000年生まれ、今後も長く世界一を争うであろうライバルとの初の五輪決戦で惜しくも屈した

日本男子は60キロ級の永山竜樹(銅)66キロ級の阿部一二三(金)73キロ級の橋本壮市(銅)81キロ級の永瀬貴規(金)に続く、ここまで全5階級連続の表彰台となった。男子90キロ級では16年リオデジャネイロ五輪のベイカー茉秋以来となるメダルとなった。

準決勝では地元フランスのマキシムガエル・ヌゲアプアンブに圧勝。怪力相手に序盤は面食らったが、しっかり襟と袖を持って圧力を強める。2分10秒、小外刈りで技あり。3分33秒、大内刈りで技ありの合わせ一本勝ちを収めた。

初戦の2回戦はエストニア選手に開始44秒の大外刈り、準々決勝はUAE選手を下した。2分過ぎに投げて相手の背中あたりを畳につけ、場内ビジョンに1度は「IPPON」と表示されたが、ビデオ判定でポイントなしとされた。切り替えて、相手に3つ目の指導が出るまで攻めて攻めて反則勝ちした。

母親が米国出身。父親が授けた「三四郎」という名前は、柔道小説「姿三四郎」とは関係ないという。しかし「和の心」を重んじる人間に育ってほしい、との願いが込められた。本人も愛しており「今まで平成の三四郎(古賀稔彦さん)とか偉大な先輩方がいましたが、僕、最初から三四郎ですから」。真っすぐな性格で男前に育った。

23年の世界選手権で銅メダル。昨年から今年にかけての国際大会では22年世界王者のボボノフ(ウズベキスタン)も同23年のマイスラゼ(ジョージア)も倒した有望株だ。

東海大出身。主将を務めた4年時に全日本学生優勝大会では「伝説」になった。男子団体、伝統の体重無差別7人制の決勝。1-1からの代表戦になり、国士舘大の3年だった斉藤立(23=JESグループ)と対戦した。

今回のパリ五輪に男子100キロ超級として、ともに日本代表として出場している全日本王者。斉藤が負傷明けだったとはいえ、体重160キロ超を90キロ台の村尾が抑え込んで、体重差75キロをはね返しての一本勝ち。柔道史に残るインパクトを残した。東海大OBで00年シドニー五輪男子100キロ級金メダリストの井上康生氏からも「歴史に残る試合」と称賛された。

令和の三四郎は、頼もしい。「日本柔道は金メダルを取って初めて『おめでとう』と言われる立場」の心意気でいる。もう1つのルーツ米国のマイク・タイソンにも憧れる男が、海外勢を中心に大会ごとに優勝者が入れ替わっている激戦階級の新王者には届かなかったが、柔道界に新たなスター候補が誕生した。