粘り強く戦った日本は、細谷のゴールで勝利をものにした(C)Getty Images パリ五輪・サッカー男子日本代表は、グループステージ最終節でイスラエルを1-0で下し、3連勝でグループ首位通過を果たした。 すでに決勝トーナメント進出…

粘り強く戦った日本は、細谷のゴールで勝利をものにした(C)Getty Images

 パリ五輪・サッカー男子日本代表は、グループステージ最終節でイスラエルを1-0で下し、3連勝でグループ首位通過を果たした。

 すでに決勝トーナメント進出を決めていた日本は、6人をターンオーバーして臨んだ。パラグアイとマリに2連勝を飾ったおかげで、このイスラエル戦をコンディション調整とイエローカードの累積回避に充てられたのは大きい。

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 ただし、半分強のメンバーを入れ替えたためか、立ち上がりはあまり良くなかった。特にセンターバックでコンビを組んだ、鈴木海音と木村誠二の立ち位置が低いため、クリアボールなどに対しても相手FWを潰し切れず、攻め込まれる場面が繰り返された。

 相手1トップのエラド・マドモンは中盤に下がる傾向が強く、トップ下のオムリ・ガンデルマンも広範囲に動いてボールに絡む。どちらもフラフラと最前線を離れるため、鈴木と木村は深追いするリスクを感じたのかもしれない。ただ、それ以前にディフェンスラインと中盤の距離がガバッと空いてしまい、相手にスペースを与えすぎた。

 当然、ベンチからは声が飛ぶ。センターバックの2人がこの消極的なポジショニングでは、ハイラインの守備など到底不可能だ。そこで鈴木も潰しに行くのだが、そのアタックした相手にフリックされて、右サイドバックに入った西尾隆矢の背後を突かれるなど、20分辺りまではトライ&エラーの繰り返しだった。

 多難の立ち上がりではあったが……よし、これで大丈夫。

 そう思えたのは、26分の場面だ。日本が敵陣でボールを失い、イスラエルは足下で運んできたが、マドモンからリエル・アバダへのパスに対し、センターサークル付近で鈴木が鋭く前へ出て、インターセプト。起点を作らせなかった。また、この鈴木のチャレンジに対し、西尾、木村、内野貴史はカバーポジションを取っており、積極的であるだけでなく、バランスも改善。時を同じくして、序盤はミスが続いていた川崎颯太も本来のプレーを取り戻し、日本は30分に差し掛かる頃には、落ち着いて試合をコントロールできるようになった。

 それにしても、なぜ西尾と木村の慣れたコンビではなく、バックアップから入れ替えた鈴木と、木村をセンターバックで組ませたのか。これはやはり、決勝トーナメントを見越しての準備だろう。西尾と高井幸大は共に1枚警告を受けており、今後は累積警告による出場停止のリスクがある。やむを得ず一発退場といった事態も含めれば、鈴木を出場させる想定は必要だ。

 そこで、このイスラエル戦で組ませた。序盤のドタバタ対応と、その修正を見る限り、不可欠なトライだったようだ。

 そんなわけで前半はターンオーバーした割には、まずまずの内容で、0-0で終わった日本。後半はフィールドプレーヤーでは唯一、3戦連続のスタメン出場をしていた山本理仁を下げ、荒木遼太郎をボランチへ。荒木は守備に出て行くタイミングをつかめず、遅れて寄せて、背後を突かれることが多かった。
 
 そうしたメンバーの再変化に加え、イスラエルが9番FWドル・テルグマンを投入して前線の質を上げ、両サイドバックを高く上げてきた修正もあり、後半の日本は押し込まれる時間が増えた。イスラエルは勝たなければならない状況なので、0-0のままではダメ。前半のような速攻主体ではなく、ポゼッションによって日本を押し込む戦術に切り替えてきた。

 いくつか危険なシュートを許したが、ここは「国防」の名高い小久保玲央ブライアンがシャットアウト。マリ戦はあまり空中戦に飛び出さなかったし、イスラエル戦はキャッチできそうな場面でも弾いたりしたので、自ら活躍の場面を増やした感はある。とはいえ、3戦完封は何よりの結果だ。構えを崩される場面がほとんどなく、シュートに対して機敏に足を運べている。国防小久保は今日も健在だった。

 0-0でも構わない状況だったが、終了間際には細谷真大にゴールが生まれ、1-0で勝利。大喜びするわけでもなく、漏れるような笑顔を浮かべた細谷からは、彼が窺い知れぬプレッシャーと戦っていたことを想像させる。コンディション調整に加え、プレッシャーからの解放。怖いほどパーフェクトだった日本のグループステージが終わった。

 準々決勝は、なぜこのチームが2位で抜けてくるのか、スペインとの対戦だ。前回の東京五輪で日本が敗れた相手でもあり、今大会前には「正直やりたくない」と国防殿がフラグを立ててしまった相手でもある。

 鍵を握るのは日本のポゼッションだろう。五輪代表やA代表の軸であるミドルプレスが機能することはある程度予想していたが、ポゼッションでこれほど試合をコントロールできるとは思わなかった。それがグループステージ3戦に共通するサプライズだ。

 スペインのプレッシングを避け、日本がボール支配率で5割とはいかなくても、4割を越えるくらいになれば、スペインにとっては気分の優れない試合になる。そこまで持ち込めば、充分勝機はあるのではないか。消化試合から一転、次は大一番だ。

[文:清水英斗]

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