(29日、第106回全国高校野球選手権三重大会決勝 鈴鹿0―2菰野) 良い人たちとめぐり逢(あ)えるように――。そんな思いで命名された菰野の栄田人逢(とあ)投手(2年)は優勝が決まり、「仲間に助けられ投げきることができた」とほっとした表情を…

(29日、第106回全国高校野球選手権三重大会決勝 鈴鹿0―2菰野)

 良い人たちとめぐり逢(あ)えるように――。そんな思いで命名された菰野の栄田人逢(とあ)投手(2年)は優勝が決まり、「仲間に助けられ投げきることができた」とほっとした表情を浮かべた。

 栄田投手は準決勝までの4試合すべてに登板、準決勝では三重相手に7回コールドで零封した。「緊張より楽しみ」と臨んだ決勝だった。

 左腕からたんたんと投げる球は初回からさえていた。130キロ台の直球は低めに決まり、緩い球をはさみ、縦や横に変化するスライダーは切れが良かった。二回1死から4者連続で三振を奪った。

 だが五、七、最終回には、走者を2人背負うピンチに立たされた。「思うところにストライクが入らない。これまでの試合の疲労もあったと思う」

 栗本賢佑捕手(2年)がマウンドに駆け寄り、「球は悪くない。気持ちの問題や」。森柊真(しゅうま)一塁手(2年)は「冷静になれ」「周りを見ろ」と励ましてくれた。

 「大崩れしないのが頼もしい」(森田亮太監督)という栄田投手。仲間の言葉で、かっとなる気持ちを抑えることができたといい、最終回は併殺を取って試合を終わらせた。

 マウンドでバックスクリーンに向かって人さし指を突き上げた背番号1に、同じように人さし指を突き上げた仲間たちが重なった。「よく投げきった」と声を掛けられ胸が熱くなったという。

 帽子のひさしの裏には大きな文字で「恩」と書かれている。栄田投手は「大勢の人に支えられている。甲子園でもみんなで校歌を歌いたい」と言った。(高田誠)