(28日、第106回全国高校野球選手権栃木大会決勝 石橋9―8国学院栃木) 初回に4点を奪われ、2死二、三塁から救援登板した石橋の入江祥太(3年)はピンチでも笑顔だった。理由のひとつは相手への牽制(けんせい)。「のまれたら負けだから」。もう…

(28日、第106回全国高校野球選手権栃木大会決勝 石橋9―8国学院栃木) 初回に4点を奪われ、2死二、三塁から救援登板した石橋の入江祥太(3年)はピンチでも笑顔だった。理由のひとつは相手への牽制(けんせい)。「のまれたら負けだから」。もうひとつは「本気で野球を楽しみたいから自然に笑顔になる」。

 今年創立100周年の石橋は県内有数の進学校。平日の練習は2時間で、練習後はそのまま塾に向かう部員も多い。練習時間が貴重なだけに野球が楽しい。そして、仲間と常に「いかに練習の効果を上げられるか」を考えた。

 例えば柔軟運動。全員で輪になるチームが少なくないが、「伸ばしたい場所は人それぞれ」と個人で取り組む。メニューごとに選手だけでミーティングし、一人ひとりがその日のテーマを宣言するのも日課。課題を明確化し、「練習のための練習」をしないのが狙い。

 笑顔でいれば「神」も味方する。この日も1点を追う六回、1死満塁で打席が回った。渾身(こんしん)の打球はショートゴロに。「しまった。せめてゲッツーにならないように」。そう願って一塁に全力でヘッドスライディング。気づけば敵失を誘い、逆転に成功した。

 父の影響で小1から野球を始めた。中学時代は県内の強豪・県央宇都宮ボーイズでプレー。高校は「文武両道を一番実現できる」と石橋を選んだ。昨夏の全国大会で優勝した慶応(神奈川)の加藤右悟と小宅雅己は、中学時代のチームメートで、LINEで連絡を取り合う仲。常に刺激を受ける存在だ。

 昨春の選抜大会に「21世紀枠」で出場したが、初戦で涙をのんだ。「もう一回ここに立って、勝ちたい。校歌を歌いたい」。そう心に誓った。

 考え続け、頑張り続け、手にしたチャンス。「野球の神様は見てるぞ」。大切にしている父の言葉が胸によみがえる。この夏、全力で野球を楽しみたい。(高橋淳)