(27日、第106回全国高校野球選手権福島大会 学法石川9―1相馬) 相馬のエース宝佑真投手(3年)は試合後、相手の校歌を聴く間、涙をこらえきれなかった。「勝たせてあげられなくてごめん」という申し訳なさ。同時に、「最高の仲間とここまでやっ…

 (27日、第106回全国高校野球選手権福島大会 学法石川9―1相馬)

 相馬のエース宝佑真投手(3年)は試合後、相手の校歌を聴く間、涙をこらえきれなかった。「勝たせてあげられなくてごめん」という申し訳なさ。同時に、「最高の仲間とここまでやってこれて良かった」という思いがこみ上げた。

 中学の軟式野球部で県の頂点に立ち、地区選抜でも活躍した。「地元から甲子園を目指そう」。この時のメンバーと約束し、強豪校からの誘いを断って相馬に進んだ。

 セットポジションが主流だが、今どき珍しく大きく振りかぶって投げるスタイル。今春から解禁された二段モーションも試し、夏直前まで理想の投球を追及した。

 昨夏もエースナンバーを背負ったが、淡々と投げていた。今夏は違った。3アウトを取る度、マウンドで激しくほえた。準々決勝までの4試合で33奪三振。相馬を32年ぶりの4強に導いた。

 この日の学法石川戦。相手は鋭くバットを振ってくる。自信を持っていた直球が狙われた。どれだけ打たれても、仲間からは「ナイスピッチング」「まだまだここからだ」。気持ちを奮い立たせ、マウンドに立ち続けた。

 16安打を浴び、取れた三振は二つ。「通用しなかった。悔しい」と言葉を絞り出した。でも、「相馬を選んで、仲間と野球ができて、悔いはない」。選手19人で挑んだ夏は、かけがえのない宝物だ。(酒本友紀子)