(27日、第106回全国高校野球選手権鹿児島大会決勝 神村学園8―0樟南) 六回、4点を追う樟南の攻撃。主将の3番坂口優志選手(3年)は泥だらけになったユニホームに再び着替えて打席に立った。出塁できなかったが、ぼろぼろの「背番号6」に戻し…

 (27日、第106回全国高校野球選手権鹿児島大会決勝 神村学園8―0樟南)

 六回、4点を追う樟南の攻撃。主将の3番坂口優志選手(3年)は泥だらけになったユニホームに再び着替えて打席に立った。出塁できなかったが、ぼろぼろの「背番号6」に戻したのには訳があった。

 ユニホームが破れたのは0―3で迎えた四回の攻撃。1死一、三塁でサインはヒットエンドラン。打者が空振りして一塁走者が挟まれた。三塁走者の坂口選手は「賭けに出るしかない」。隙をついて本塁に頭から突っ込んだが、アウト。右肩部分が裂け、次の守りから背番号17に着替えていた。

 ユニホームが破れたのは3試合連続だ。最初は準々決勝の鹿児島実戦の初回、一塁に頭から突っ込んだ時だ。そのときも保護者に縫ってもらって途中から「6」に戻し、完封勝ちした。

 「伝統の一戦と呼ばれる鹿実に勝って、験担ぎじゃないんですけど、このユニホーム、何かあるんじゃないかと言われて」

 決勝でも繕ってもらい、ユニホームを「6」に戻したのも劣勢のチームを「勢いづかせたい」との思いからだった。

 チーム事情から6月に主将になった。ばらばらになりかけたチームをまとめるため「声をかけることを心がけた」。結果として「一体感が生まれた」と山之口和也監督。坂口選手もけがでスタメン出場は3回戦からとなったが、合わせるようにチームも波に乗った。

 たどりついた決勝の舞台。悔いが残ると振り返ったのは1死二塁で迎えた初回の打席だ。「先制点を取っていれば流れをつかめたはず……」。右飛に倒れ、直後に流れを失った。

 昨夏に本塁打を放つなど強肩強打の遊撃手として注目されたが、今大会は14打数5安打、1打点。打撃では理想の結果は残せなかった。1年秋から背負ってきた背番号6の愛着のあるユニホームで最後の瞬間を迎えた坂口選手。「悔しいが、神村学園の方が上だった」と2連覇の相手をたたえた。(仙崎信一)