(27日、第106回全国高校野球選手権福井大会決勝 北陸4―1敦賀気比) とっさに右手一本でおっつけた。 0―0で迎えた七回2死一、二塁。北陸の7番・高野翔は2球で追い込まれてから、ひたすら粘った。 9球目は内角低めに来たカーブ。捨てると…

 (27日、第106回全国高校野球選手権福井大会決勝 北陸4―1敦賀気比)

 とっさに右手一本でおっつけた。

 0―0で迎えた七回2死一、二塁。北陸の7番・高野翔は2球で追い込まれてから、ひたすら粘った。

 9球目は内角低めに来たカーブ。捨てると決めていた低めの変化球に、思わず手が出てしまった。「本当に意地です」。体勢を崩されながらも、

何とか中前に落とす先制適時打に。「よっしゃー!」。一塁上で体全体を使い、喜びを表した。

 相手のマウンドには、今春の選抜大会に出場した敦賀気比の竹下海斗がいた。県内屈指の左腕だが「疲労がたまっているように見えた。球もいつもより遅く見えた」。

 六回までチームは1安打に抑えられていた。この回は先頭打者が安打で出塁し、続く4番の小矢宙歌(そらた)も14球粘って四球をもぎとった。「この回しかない」と高野。そんな意地をバットに乗せた。

 1年生だった昨秋からレギュラーで、今大会も下級生でただ一人、1桁の背番号を背負う。林孝臣監督も「先輩とも(物おじせず)会話できる。引っ張っていける子。(あの打席は)よく粘ってくれた」と評価する。

 「先輩たちが支えてくれるからこそ、堂々とプレーができる。投手陣もいいから守りやすい」と高野。あの一打も「僕だけじゃなく、みんなのおかげだと思います」。

 昨夏の甲子園は初戦の2回戦で慶応に敗れた。今年は攻守で貢献し、少しでも先輩たちと長い夏を目指す。=セーレンスタジアム(大坂尚子)